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生活の芯 [gillman*s park]

生活の芯
 
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 昼前に散歩。台風一過の秋晴れとはならず曇り。しかもこの週末はまた雨らしい。ベンチでは常連の年寄りが新聞を読んだり、鳩と遊んだりしている。平日の公園を訪れる人は大きく三種類に分かれる。

 ひとつはぼくみたいに散歩自体が目的の人たち。二つ目は犬の散歩に来る人たち。彼らはそこここに犬友達がいるみたいだ。三番目はランニングをしている人たち。散歩をしているとその間にランニングをしている同じ人と何度も行き会う。当然ぼくが公園を一周する間に彼らは何週もするからだけれど…。

 その格好も様々だけれど、例えばぼくは散歩の時は大体ジーパンにTシャツかパーカーで、必要に応じてウインドブレーカーなどを着ている。他の人たちも大差はなくいわゆるカジュアルな恰好をしている。公園の散歩というとドイツで下宿していた若いころ、隣の部屋のレンツおばさんのことを思い出す。
 

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 プラチナブロンドの七十代のおばあさんで一人で住んでいた。(当時はぼくにとって60過ぎた人はおじいさん、おばあさんに見えていた) おばさんの部屋とぼくの部屋はもともと続き部屋だったのを仕切りのドアにカギをかけて分けて使っていた。したがって隣の部屋の気配は分かるのだけれど…。

 そのおばさんは午後になると毎日のように公園に散歩に行く。その時のいでたちは鳥の羽が刺してあるフェルトのチロリアンハットを被り、お気に入りのツイードのジャケットを着て、脚が悪かったのでステッキをついて、でも少しいつもより背筋を伸ばして颯爽と…まるで日曜日に教会に行く時のお出かけ着みたいだった。

 そういえば下宿のオーナーのフィッシャーおばさんもちょっとそこまで買い物に行くのにもシャンとした恰好をしていた。もう半世紀も前の、その時既に老境になっていた人たちの話なんで、それが今でも通じるドイツ人の典型的な例ではないと思うのだけれど、ぼくはそれは嫌いではなかった。と、いうよりそういう生活のありようが好きだった。

 ひるがえって今は、コロナ禍のせいもあって、すっぴんにマスクをしてジャーシー着てコンビニに行き買ってきたものをプラスチックトレイのままテレビをみながら食べている、なんてことも多いかもしれない。それはそれで、それなりに合理的ではあるので、他人がとやかくいう事ではないけど…。

 あの頃、おばさんたちの生き方や教わったことを今でも時々思い出すことがある。というより、今になって思い当たることも多い。親の小言と同じかな。それは多分、アナクロで古い時代の幻影だけれど、どこか生活に芯があった時代のようにも思える。
 

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 *ぼくの下宿の隣部屋の住人だったレンツおばさんは重度の夢遊病を患っていました。月に何度か真夜中にレンツおばさんの亡くなったご主人がおばさんの処にやってくるらしく、その時には楽しいおしゃべりや二人でダンスを踊っている様子がぼくの部屋まで聞こえてきました。真夜中の死者との楽し気なダンスにぼくは震えました。

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マスクの時代 [新隠居主義]

マスクの時代
 
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 最近の報道ではWHOがようやく新型コロナの終息が見えてきたというような希望的な観測をしているらしい。本当にようやく、だけれどそれだって冬に向かってインフルエンザと新型コロナ第八波のダブル流行の可能性がなくなった訳ではないと思うのだけれど…。

 マスクとの付き合いがこんなに長くなるとは思っていなかった。春の花粉の時期には以前からマスクのお世話になっていたのだけれど、こんなにのべつ幕なしに着けている日常は想像もできなかった。一歩外へ出れば駅だろうが、電車の中だろうか、通りだろうがマスクを着けていない人を探すのは困難なくらい日本人はマスクの着用を励行している。
 

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 ぼくは最近はもう公園を散歩するときにはマスクは着けていない。でも散歩の帰りにコンビニに寄ったりすることもあるからポケットの中には必ず一枚は忍ばせてはあるのだけれど。マスクを取るとやっぱり開放感がある。まぁ、室内の飲み屋などではこの解放感が危ないという人もいるのだけれど、それももう少しの我慢だと思う。

 ところが中にはマスクがすっかり身体の一部になってしまって、マスクを着けないで外を歩くと何だか下着をつけないで裸で歩いているようで恥ずかしく感じるという困った人も。またマスクをしていれば眼だけ化粧すればちょっとそこのコンビニ辺りにならすぐに外出できるのでそれに慣れてしまったという人も。

 マスク着用にはしっかりとした医学的な根拠があるから大事なことではあるけど、ただ着けていさえすれば安心というおまじない的になっていたこともあったかもしれない。またマスクが直ぐにファッション・アイテム化してしまうのはいかにも日本的だけれど、不織布でないと効果が薄いと医学的に軌道修正されたのは良かったと思う。

 ドイツ人も他の西欧の人同様マスクは好きじゃないけど、電車などで着ける時は徹底してN95基準のものをせよとルール付けされている辺りはドイツ人らしい。西欧人にとってマスクは非日常的な奇異なものであることは今後も変わらないと思う。

 顔の表情がコミュニケーション上で大事な役割をしている社会では、相手の表情が読めないということはとてもストレスフルなことなのだろう。逆に日本人は顔の表情は控えめで、そのかわり目で微妙な感情表現をするからサングラスを嫌がる傾向がある。まぁ、帽子にサングラスにマスクというiPhoneの顔認証もお手上げな時代は一日も早く終わって欲しいものだ。
 
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