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落ち葉の下には屍体がある [Retro-Kino]

落ち葉の下には屍体がある

 やっとイチョウの葉が紅葉の本番を迎えた。家の近くの住宅地の公園にあるイチョウ並木がきれいだ。そこは高圧線の下の土地がずうっと細長い公園になっている。そこにイチョウ並木があって秋になると紅葉の名所にもなっている。
 
先週、イチョウが色づき始めたので写真を撮りに行ったら、イチョウは見事に紅葉していたが下の落葉は清掃のおじさんたちがきれいに片付けた直後らしく、道路の地肌が丸見えでいかにも情緒がなかった。

 今日行って見たら、しめしめ良い具合に落葉が溜まっている。イチョウ並木はこうでなくっちゃ。写真を撮ろうと思ったら、犬を連れたおばさん六人ほどが駄弁っていてなかなかどかない。僕には「どいてくれ!」、なんて言えないなぁ。ということで撮影待ち。



 地面の上にぎっしりとイチョウの葉が敷き詰められている。一つ一つの葉をみるとイチョウの木は別名「鴨脚樹」と言われるように、カモの水かきの脚に見える。わ~っ、カモの脚だらけだ、と思ったら不気味に感じた。



 以前こんな光景を見たことがあるなぁ。そうだ今年の春、桜の花びらがはらはらと落ちて、地面が毛氈のように桜の花びらで覆われていたことがあったっけ。

桜の花の下には屍体が埋められている…

夜目にも妖しいまでの桜の美しさに、日本人が考えた究極の美意識だ。
じゃあ、鮮やかな色の落葉の下には、何があるんだろうか。

■落葉の下にもやっぱり屍体がある

 ニュー・イングランドのヴァーモント。のどかな田園風景に紅葉が映える。おもちゃの光線銃を持った少年、アーニーが歩いてくる。すると、銃声が三発!聞こえた。「お前のような奴の扱いには慣れてるんだ」という男の声もした。
 アーニーが森を抜けていくと、落葉の上に男の屍体が大の字に横たわっていた。アーニーは丘を駆け下りた。ハリーという男の屍体が発見された。妻は自分が殴ったために死んだと思い、屍体を隠そうとする。だが、彼を殺したと主張する人物は他にも存在していた。彼らは誰が真犯人が知らぬまま、ハリーの屍体を担いで犯罪を隠蔽しようとするが……。

  こうして物語には自分がハリーを殺したと思い込む人間が次々と現れ、そのたびに哀れなハリーは枯葉の下に隠されたり、掘り出されたり。落ち着いて死んでいられない。
目にも鮮やかなニューイングランドの紅葉の風景の中に展開される、のんびりした殺人事件。これはアルフレッド・ヒッチコック監督唯一と言っていいコメディ・サスペンス映画「ハリーの災難」(1956年)のシーンだ。



ストーリーについてはサスペンス映画のお約束どおりこれ以上は語らないが、この作品はシャリー・マックレーンのデビュー作でもあり、面白いですよ。なにより紅葉がきれいです。

ハリーの災難 The trouble with Harry(1956)


                 
*シャーリー・マックレーンはこのあと「八十日間世界一周」そして、ワイルダー監督の不朽の名作「アパートの鍵貸します」で一躍スターになる。最近ではスピリチュアル・アクトレスとして精神世界の案内人としても活動している

*「桜の樹の下には屍体が眠っている!これは信じていいことなんだよ。何故って、桜があんなにも見事に咲くなんて信じられない事じゃないか。」「俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ」…これは梶井基次郎作『桜の樹の下には』の一節。

*桜の花と日本人の生死観とは深く関わっているんですね。そういう背景があるから梶井の小説にそのような表現がでてきたのだろうと思います。
  ■願わくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月の頃(西行 続古今和歌集)

*近くの舎人公園で十年位前に実際に女性のバラバラ殺人事件があり、死体の一部が桜の木の下に埋められていたそうです。どの桜の木かは知りませんが、あまり、知りたくもありませんね。


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コメント 19

こんばんは。
凄い量の銀杏落ち葉。こんなに落ちたら、もう木には、葉が残っていないのかしら。こういうアングルのお写真も素敵ですね。わたくしも昨日銀杏の写真とりました。2日後アップ!
この映画面白そう・・・
by (2005-11-29 22:31) 

櫻

懐かしい映画~。深夜、受験勉強から逃避して見ました。
死体になってからの災難が妙におかしくて・・・。
死体が可笑しい、と言う不謹慎さが更に可笑しさを増して・・・。

落ち葉の下に死体があるとすれば、鴨の大群に踏みつぶされた権兵衛・・・?
by (2005-11-29 23:43) 

HAL

え〜〜死体が埋まってるんですか〜〜
怖くて近づけないな〜(>.<)
by HAL (2005-11-30 00:38) 

どらとら

落ち葉の下でも桜の下でも死体は見たくないで〜す。
ですが、イチョウ、非常に綺麗に撮れてますね。
by どらとら (2005-11-30 01:10) 

mayumi

落ち葉でさえ絵になる
秋って才能が豊かなんだなあ
by mayumi (2005-11-30 07:38) 

コラムとしてとっても楽しい読み物でした。
落ち葉からいろ~んなことが連想される。人の頭ってたくさんのことを考えているんですよね。それを全部言葉にしたら、凄い量になります。
by (2005-11-30 08:25) 

Baldhead1010

桜の花色が変わったら、疑っていいです^^
by Baldhead1010 (2005-11-30 11:37) 

みつなり

gillman さんの記事はいつも一味違いますね。
教養の差を感じてしまいます。
今週になって急激にイチョウの葉が散り始めましたね。
毎朝掃除しているオジサン、掃いても掃いても無駄だよ・・・
by みつなり (2005-11-30 12:28) 

mami

こんにちは~♪
イチョウの絨毯があちらこちらで見られますね!
「ハリーの災難」は見ていませんでした。
お越しいただきまして、ありがとうございます。m(_ _)m
by mami (2005-11-30 12:51) 

はなこさん

ハリーの災難、楽しい作でしたね~
銀杏の絨毯素晴らしいですね。
こちらでも通りの銀杏の落ち葉に混じってぎんなんが一杯!
町内のおじさんたちが拾っていました。
焼いて塩をふって・・・美味しいですね。
by はなこさん (2005-11-30 13:26) 

offbeat

ヒッチコック映画は結構見てる方ですが、この映画は見てないですね。。
『死体は喜劇だ』っていうのがヒッチコックの主張だとか。。。
今度是非見てみます!(^0^)
by offbeat (2005-11-30 13:51) 

雨が降る前でしょうか?落ちた銀杏の葉がとてもきれいです。
かさかさと踏みしめる音が、聞こえてきそうな写真でした。
by (2005-11-30 16:35) 

coco030705

こんばんは。
銀杏の落ち葉の見事なお写真!
ヒチコックの「ハリーの災難」はずっと前に、TVのヒチコック特集で
見ました。すごく面白い映画でした。ヒチコックは何度見ても、
おもしろいです。
梶井基次郎の一節もいいですね。桜の花は美しいので、ほんとうに、
なにか秘密めいたものが埋められていても、不思議じゃないですね。
by coco030705 (2005-11-30 17:59) 

腹這いで撮りましたか?
ナイスアングル!
by (2005-11-30 19:44) 

ccq

こりゃ見事に大量ですな。巻き上げてみたくなりますね。
by ccq (2005-11-30 20:34) 

としぽ

イチョウがもうこんなに散っていますか。木に付いていてもきれいだし
散ってもきれいですね。
by としぽ (2005-11-30 21:52) 

山猫庵

子供の頃、落ち葉を袋一杯に集めて
それを一気にぶちまいて頭からかぶった記憶が。
いつかまたやってみたいなぁ(^^)
by 山猫庵 (2005-11-30 22:35) 

nobby

なんかおいしそうな銀杏の葉っぱと思いきや、
屍体が埋まっているとの映画解説に至る発展。
とても面白かったです。『ハリーの災難』もう一度見直して観~よおっと。
by nobby (2005-12-02 11:09) 

銀杏の葉、とても素晴らしいです!
『ハリーの災難』は、面白い映画ですね
by (2005-12-04 02:30) 

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