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秋の日の… [gillman*s park]

秋の日の…
 
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 ■ 秋の歌 

 秋の日の ヴィオロンの
 ためいきの 身にしみて
 ひたぶるに うら悲し。

 鐘のおとに 胸ふたぎ
 色かへて 涙ぐむ
 過ぎし日の おもひでや。

 げにわれは うらぶれて
 ここかしこ さだめなく
 とび散らふ 落葉かな。
 
   ヴェルレーヌ(上田敏訳)


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 上田敏の訳詞はテンポがいいので好きなのだけれど、このヴェルレーヌの詩には特別な思いがある。というのは1968年に公開された映画「史上最大の作戦 (The Longest Day)」のワンシーンにこの詩が使われていたからだ。

 この詩は第二次大戦中BBCのフランス語放送がフランスのレジスタンスに対する暗号として流していた。つまりこの詩の冒頭が流されれば近いうちに連合軍の大規模な上陸作戦が行われ、そしてそれに続くフレーズが流されれば作戦は48時間以内に決行されるという意味であった。

 映画のシーンではフランスのレジスタンスのメンバーが真剣な面持ちで一台のラジオを囲んで聞き入っている。そこにこのヴェルレーヌの詩の朗読が流され、それを聞いたレジスタンスの面々が歓喜する。

 この映画の名シーンと言ってよいと思うのだけれど、考えてみれば時代は変わってラジオがVPNを経由したSNSになってはいるが、今でも色々な地域で同じように抑圧された人々が、パソコンやスマホを食い入るように見つめ何かの合図を待っているのかもしれないのだ。息をひそめて…。
 

 先週末から公園散歩を再開した。まだ距離は全然歩けないけれど痛みがないのが助かる。手術の傷にフィルムがまだ貼ってあるので風呂はまだ、シャワーを浴びている。昔頸椎を手術した時はホッチキスみたいなもので縫合してあったのだけれど今はテープらしい。

 今日は風が冷たいので身体が冷える。しばらく来ないうちに公園のピラカンサは赤くなり、落羽松も褐色の葉を落とし始めている。かと思えば変な陽気に面食らったのか桜が咲いている木もある。外の空気を吸うとそれだけで元気をもらえる気がする。
 

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 *ずいぶん昔になりますが、この映画「史上最大の作戦」で陸軍大将を演じていたドイツの俳優クルト・ユルゲンスと一度だけ話をしたことがあります。映画「眼下の敵」の名演でも評価されていた彼は最も軍服の似合う役者と言われていました。

 1972年の冬にバンコックから台北経由で羽田にゆく同じ飛行機に乗り合わせてトランジットで台北に降りたときに待ち時間に少し話すことができました。女性を同伴しておりこれから札幌オリンピックを観に行くのだと言っていました。気さくな反面、威厳に満ちた感じでした。
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コメント 6

hagemaizo

文字になっている詩、それを挟んで詩心ある美しい写真が。
by hagemaizo (2023-11-21 22:02) 

夏炉冬扇

すばらしい体験ですね。
別世界のお話でした。
by 夏炉冬扇 (2023-11-22 08:21) 

TaekoLovesParis

私も「史上最大の作戦」の映画で、ラジオにみんなで聞き入る場面、
字幕に「秋の日の、、ひたぶるにうら悲し」と中学で暗唱させられて知ってる詩が流れたの、今も鮮やかに覚えてます。クルト・ユルゲンス、
戦争映画で有名な俳優でしたね。実際にお見掛けしても、威厳があったとは、良い思い出ですね。
by TaekoLovesParis (2023-11-22 13:48) 

そらへい

ヴェルレーヌ(上田敏 訳)秋の歌
久しぶりに目にした気がします。
by そらへい (2023-11-22 20:52) 

johncomeback

拙ブログへコメントありがとうございます。
クルト・ユルゲンスと会話って・・・ スゴい( ゚д゚ )
by johncomeback (2023-11-22 22:38) 

JUNKO

何語でお話になったのかな、すごい体験ですね、クルト・ユンゲルス威厳ががあって、気品に満ちた俳優さんですね。その映画も見ていますし、詩も知っていますがそのシーンは記憶にありません。余りに昔の話なので。でもいいお話聞きました。1枚目のシルエットの写真映画のワンシーンのようです。
by JUNKO (2023-11-24 20:27) 

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