SSブログ

[Déjà-vu] No.8  On the Train to.. [Déjà-vu]

[Déjà-vu] No.8  On the Train to...

DSC05723bw.JPG


 のテーブルに置かれたミネラルウォーターの瓶が列車の振動で時折カタカタと音をたてる。ずっと鳴っているわけではなくてなんかのタイミングで鳴ったり、止んだり。昔、F分の1という自然界での不規則なゆらぎサイクルが実は人の気持ちを和らげるのだと話題になったことがあるけど、このカタカタ音もそんな感じがしないでもない。


 イプチッヒからベルリンに向かうICEの列車の中、一組の老夫婦の隣の席に座った。友人とぼくはライプチッヒの駅で列車の発番線が変更になったのをうっかり見落として列車を一本乗り損ねてしまったけど、何とか次の列車に乗りこむことができた。重いトランクを押してそそくさとドアに一番近い席に座った。

 先に乗っていたその夫婦は時折二言三言言葉を交わすくらいであとは黙っている。列車が駅を離れて巡航速度になると車内には列車のディーゼル音と時折するあのミネラルウォーターの瓶のカタカタ音だけが聞こえていた。女性の方はずっと窓の外を見ている。旦那の方はじっと入り口のドアの方を見ていた。

 その内奥さんがひとつため息をついて深々と背もたれに寄り掛かかり目を閉じた。窓から差し込む弱い光が彼女の深い皺を際立たせていた。カタカタカタ。何があったんだろうかなんて詮索するつもりはぼくにはない。これも旅の一光景なのだ、と。

 その列車の中でぼくは三枚だけ写真を撮った。それっきり、その時の光景は忘れかけていたのだけれど、日本に戻ってその写真を見たとき、ぼくの中の記憶が再び動き出した。まるでヴィム・ヴェンダースのムーヴィーみたいに…。

DSC05724bw.JPG




DSC05725bw.JPG無題.png



..

nice!(50)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

nice! 50

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント