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テレビの向こう側 [TV-Eye]

テレビの向こう側

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 いつも思うのだが、ぼくのようなありふれた市井の人間がどうしたら今世の中で起こっていることについて本当のことを知ることができるんだろうか。金と時間があればそのことが起こっている現場に行くのが良いのかも知れないけれど、そこに行ったって真実が見えるとは限らないし、第一何かが起こるたびにそこに駆けつけていたら自分の仕事なんか出来なくなってしまう。

 そこで、ぼくの代わりにそういうことをやってくれているテレビや新聞やジャーナリストと称される人達がいる。それはとても便利だしありがたい。それに時間の節約にもなる。特にテレビなどの映像を伴った情報にふれるとぼくらはそれを自分の目でみたような気になる。本当のことを知ったような気持ちになる。

 今回の大震災でぼくらは色々なものを目にしたし、記者会見やニュースを通じてありとあらゆる情報にも触れた。で、本当のことを知ったような気持ちに今なっているだろうか。なんだか、どんどんおかしいぞという気持ちになっている。東電だって、政府の言うことだってなんとか委員会だって、なんか変だぞという感じがしている。

 もっといえば、それらの動きを伝えるテレビや新聞等もなんか変だぞという気がしている。記者会見だって、通り一遍の質問の部分しか流さないし、アメリカの衛星画像ではとっくの昔に確認でき海外の新聞などには出ていた福島原発の惨状を示す写真もでてこないで、「30キロ先から撮影しています」なんてご丁寧なキャプションをつけたボンヤリとふやけた映像を流し続けていた。

 さっき、ぼくの代わりにそれをやってくれると言ったが、あくまでそれはぼくの代わりであってぼくではないから、そこにはぼくと違ったフィルターがかかっている。それは、ぼくが見る時にはぼくに都合のいいフィルターが掛かってしまうように、ぼくの代わりに見て来てくれた人に都合のいいフィルターが掛かっているはずなのだ。

 ぼくらはテレビなどを例え自分の目で見たとしても、そこには既に誰かのフィルターが掛かっていることを思い出して、デジタルカメラのように補正して見なければならないのだけれど、それは口で言う程容易いことではない。デジタルカメラの画像だってちゃんと補正するためにはパラメーターを設定しなければならない。つまり事実が曲げられる要素を勘案して補正しなければならないのだ。

 ぼく自身昔、企業の広報部門を担当して情報を送り出す側だったこともあるので、フィルターのかかっていない情報などあり得ない事は承知しているつもりだ。それはテレビで見る記者会見の映像にも言える事だ。以前、ホリエモン氏の記者会見の映像を見ていて、これは最初から結論ありきの絵作りだと思ったことがある。そこにはいかに吊るし上げを演出できるかという意図があったように思えた。

 昔まだ現役の頃、危機管理会社のコンサルティングを受けたことがあるがその時、いくつかのコンサル項目の一つとして謝罪記者会見の模擬訓練をしたことがある。そこには現役のテレビ局のカメラマンや記者なども覆面で参加していた。取材をし情報を送り出す側のプロの立場から幾つかアドバイスももらった。

 会見の席には、高級ブランドものの時計などは身につけて出ないこと。必ずアップで抜かれて視聴者の反感を買う絵作りをされる。会見者の足元が見えないように会見席にはテーブルクロスをかける。顔では神妙に謝っていても、足元の形相がだらし無いとそこをカメラに抜かれる。会見中は筆記具などは手に持たない。話をしながらボールペンなどをいじっていると、それが無意識の行為であってもアップにされると苛立ってみえたり、ちゃんと話を聴いていないようにみえて誠意を疑われかねない。記者会見の席のセッティングの際、会見者のテーブルは背後の壁にできるだけ近づけて置く。カメラが背後に廻って会見者の手元にある内部資料の映像をすっぱ抜かれないためだ。

 ここには二つの動きがある。真実を暴き出そうというジャーナリズムに基づいた攻防と、取材の方向性つまりあらかじめ想定したストーリーに合わせてフィルターをかけようとする動きだ。ぼくらが自宅の居間で何気なく見ているテレビの向こう側で、もしくはその情報を送り出す過程で何が起こっているか、ぼくなんかにはそう簡単に見抜く事は出来ない。悔しいけど一つのパラメーターで簡単に補正できる程現代は単純ではないかもしれない。

 かと言って全て諦めてしまうのはもっと悔しい気がする。もう少し自分の目と頭で頑張ってみようかなと。なにも真実を突き止めたいなどと大それたことを思っているのではない。只、騙されるのはごめんなのだ。何をしたらいいのかよく分からないけど、とりあえず天才的テレビウオッチャーだったナンシー関のあの言葉は何だったのか今、考えている。

 ■ わたしは「顔面至上主義」を謳う。見えるものしか見ない。しかし目を皿のようにして見る。そして見破る。(河出書房『ナンシー関』より)

 もちろん、ぼくには彼女のように見破る力は無いが、そのうち
何かが拾えるかもしれない。


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コメント 10

Silvermac

「目は口ほどにものを言い」と言いますが、テレビを通じてでは分かりませんね。反省度がウソ発見器のように出ると良いけれど。
by Silvermac (2011-05-03 06:13) 

ナツパパ

日航機墜落事故の時、たしか扇子を使っていて非難された重役氏がいましたね。
あの頃から、一枚の写真ですべて決められてしまうようになったのかも。
愛で見るもののインパクトは大きいですねえ。
by ナツパパ (2011-05-03 09:15) 

hideyuki2007y

危機管理のコンサルティングの件、身につまされます。
by hideyuki2007y (2011-05-03 21:32) 

blanc

私も目を皿の様にしてテレビを見てたら
ウィリアム王子の奥様ケイトさんの手が荒れていたのを発見しました。
ちょっとだけ親近感持ってしまいました。
by blanc (2011-05-04 00:51) 

mimimomo

おはようございます^^
以前『やらせ』が問題になったことがありますが、大体テレビはすべて『やらせ』と
同じじゃないかと思っています。勿論程度の差はありましょうが。
真実を見る目、難しいですよね~ 時には独りよがりで分かった様な気になる場合もおきないとは限らないし。
それでも、何が真実か、考え想像することは必要だと思っています。
by mimimomo (2011-05-04 07:33) 

JOY

あきらめないということが大切なんじゃないか?という気がしています。
投げ出したり忘れたり、という自分とのたたかいなんだなぁ・・・とも。
by JOY (2011-05-04 09:29) 

ミヤ

予想しないような非常事態に遭遇したとき、
地域の指導者・組織の指導者・政府などの人物の、
力量のある人無い人の差が見えるように思います。
マスコミの情報のなかには、規制がかかっていると感じたりしますから、
わたしもあまり信用しません。
by ミヤ (2011-05-04 17:15) 

coco030705

こんばんは。
TVの報道はgillman さんのおっしゃるとおり、フィルターがかかっていますよね。新聞はどうなんでしょうね。やっぱり規制されている部分があるんでしょうか。何を信じたらいいのか、よくわからなくなります。怖いですね。


by coco030705 (2011-05-04 17:55) 

hako

危機管理コンサルほとんど役に立ちませんね。、
by hako (2011-05-05 19:54) 

坊や

伝えているには3割位の事実でしょうか。最重要、核心部分は
もちろん、大きく報道しませんし出来ませんね。干されるし・・
by 坊や (2011-05-06 17:00) 

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