SSブログ

日だまりの中で [猫と暮らせば]

日だまりの中で

MoDsc_9149.jpg

 年齢を重ねるに従って冬が苦手になってきた。ぼくは特にスキーなどのウインタースポーツはやらないからそういう意味でもこのシーズンを待ちわびるという気持ちも少なかったのかもしれない。それでも若い頃は木枯らしに吹かれながらコートのポケットに手を突っ込んで街を歩く。少し歩いた後に暖を求めて喫茶店などに飛び込むといった冬の風情は嫌いではなかった。

 しかし、数年前に頸椎の手術をしてからは冬はただ、ただ辛い季節になってしまった。寒さで硬直した僧帽筋や頸の筋肉が頸椎を締め上げる痛さは、経験してみないとなかなかわからないかもしれない。そんなこんなで冬は辛いことが多いが、辛いことばかりかというとそうとも言えない。

 最近、冬の楽しみを二つほど見つけた。結論からいえば二つともまぁ爺さんになったことの証みたいなのだけれど、一つは冬は木の形が美しいということ、そして二つ目は日だまりの愉しみとでもいうものだ。これらは時間に追われて勤めている時には考えもしなかったことだ。

 公園の木々は緑溢るる春も、緋色に染まる秋も見事ではあるが、葉がすべて落ちて素の姿になった冬の立ち姿は飾りがない分だけ木の姿勢が見えてまた別の美しさがある。人体デッサンをするためにダ・ヴインチが人体骨格図をさかんに描いたように、木の骨格を眺めているとそれがやがて目にも眩しい緑やたわわな花を支える命の源だということが伝わってくる。

 もうひとつの楽しみである日だまりについては猫に教えてもらった。冬の日、一日中部屋にいると窓から差し込む日の光が部屋の中をゆっくりと移動してゆくのがわかる。猫たちはその移動する日だまりを追ってその中でまどろんでいる。その猫たちの顔は、古今のどんな王侯貴族たちも享受しえなかっただろうような至福の表情をしている。日の光と少しの静寂があれば、それだけで十分幸せと思える時間があることを猫たちは教えてくれる。

catautumn.gif

nice!(17)  コメント(2) 
共通テーマ:blog

nice! 17

コメント 2

coco030705

こんばんは。
猫というものは、ほんとに欲がなくてすばらしいですね。
ひだまりの幸福感が伝わってくるような、いいエッセイですね。
by coco030705 (2010-12-29 23:57) 

親知らず

私はお婆さんになったら、ロッキングチェアに座って
窓際の日だまりの中、編み物をしながら猫と戯れるのが
憧れです。
仕事を辞めたら、そんな事をしたいと漠然と思っています。
by 親知らず (2010-12-31 10:59) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント