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芸人リサイクル [TV-Eye]

 芸人リサイクル    ~ひな段は芸人のリサイクル場~

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 最近KYということがよく言われているらしい。もちろん「空気読めない」の略だが、この「空気」が曲者だ。古くは山本七平の「空気の研究」なんていうのもあるが、ここでいう空気とは雰囲気くらいの意味だろう。しかし、その底には、その場を支配している何か漠としたものに反対することの恐れが横たわっているという意味では同じルーツを持っていると言えなくもない。

 もう久しくこの「空気」がテレビのお笑い界を覆っている。つまり面白くなくても面白くないとは言わせない空気が蔓延した番組作りをしているからだ。有り体にいえば今旬といわれるエド・はるみなんかはいい例だ。たぶん八割方の人が何が面白いんだと思いながら見ている。もちろん、掴みの「グー」あたりはヘーと思うのだが、それだけである。その程度の掴みなら、小学校時代どのクラスにも一人くらい掴みのうまい子がいたのとなんら変わらない。彼が何か面白いギャグをやると、それは瞬く間にクラス中に広まって、しばらくの間は休み時間はそれでもちきりだが、すぐに飽きられてしまう。

 個人的には彼女を知らないので何とも言えないが、エド・はるみはそう悪そうな人そうには見えない。それだけにつまらない芸がよけい痛々しく見えてしまう。吉本興業としては、「グー」で一発知名度を上げておいて、そのうちレポーターかなんかで定着させようとしているのだと思はうが。その間、毎日つまらない画面を見せられる視聴者はいい面の皮だ。(イヤなら見るなよ、という空気も伝わってくる)

 きっとエド・はるみはいわば新商品を出したい吉本と、旬の過ぎた小島よしおの代わりを求めていたテレビディレクター達との共通した利害関係の中で生まれた案件なのだ。それは小島よしおレーザーラモンHGの後に担ぎ出されて来たプロセスと何も変わりはしないように見える。この軍産共同体ならぬ放産共同体が作りだした戦略は、メディアを駆使して彼らが送りだした芸人達を面白くないとは言わせない「空気」を作り出すことだ。その面白さが分らない奴は笑いが分らないのだという空気を作り出す、いわばお笑いのファシズムみたいな図式だ。だが、少しは気概のある人間がテレビ界にいたなら、こんなんでいいのだろうかと思うに違いない。毎年のように芸人を使い捨てにしていいのか。

 そこは天も見捨てたものではない。そんな状況を救うべく芸人リサイクルの市場がちゃんと今は出来上がっている。今、どこのチャンネルを回しても「ひな壇芸人」のオンパレードだ。MCと呼ばれる殆ど一人で番組のギャラをかっさらっていくような司会者の前に、その他大勢の芸能界人がひな壇に並んでいる。そのMCが投げたボールにうまく食いついた芸人の顔をすかさずカメラが抜いてゆく。きっとダラダラとカメラを回しっぱなしにして、後で編集をして番組に仕立てているのだろう。

 このMCと「ひな壇」のやりかたは、僕の知る限りでは1990年代の中盤に始まった「サンマの恋のから騒ぎ」あたりから始まっていると思う。外国人のお姉ちゃんや女子大生やその他怪しげなシロウトひな壇に並べてサンマと掛け合いをやらせる番組だ。この方式なら相手がシロウトでもうまい具合に食いついてきたところをつなげれば番組になってゆく。なかには西川史子みたいに勘違いしてタレントになってしまったギャル(今は、もとギャルか)もいたりするが、基本はシロウト相手のギミックなのだ。その仕掛けが今は芸人のリサイクルに使われている。

 よく見れば、いるわいるわ。ダンディ坂野レーザーラモンHGからギター侍、はてはあの猿岩石のなんていったっけ、あの人まで。つまりは皆シロウトと同じということか。だが、やはり高いギャラをもらっているMCは気配りも一味違う。中には旧知の芸人もいたりして特別に水を向けたりもしている。もっとも視聴者にとっては迷惑以外の何物でもないのだが… この間も島田伸介ダンディ坂野に振ったとき、彼はお決まりの「ゲッツ!」をやったが、当然旬を過ぎたギャグは
面白くもなんともない。もちろん伸介も面白くないことを承知で振っているのだが… そうやって笑いとテレビがどんどんねじ曲がり、つまらなくなってゆくのはなんとも哀しい。

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ぼくは海外に行くとよくホテル等でその国のテレビを見ます。
もちろん、どの国へ行っても日本のお笑い番組のようなものはあります。
しかし、どのチャンネルを回してもそんなものばかりやっている国はそうはありません。
それも同じような芸人が、同じようなことを際限なくやっている。
日本のテレビのプロデューサーってどうなんでしょう。
テレビでも、もっとちゃんと「」を見せられる場をつくってやらないと、
芸人さん達がかわいそうな気がします。
その上でちゃんと「」を見せられる芸人さんを世に出すのが、
プロデューサーの役目でもあるような気がしますが…


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ecco

ん。
確かに・・・と思うところと
なんだか手厳しいなって思うところと
かなりコメントがむずかしいです。
by ecco (2008-06-01 01:30) 

SilverMac

吉本も生き残りの戦いが激しいですね。しばらくテレビを観ないと、新人、ローテーションが早いですね。
by SilverMac (2008-06-01 08:31) 

ナツパパ

シャボン玉ホリデーのプロデューサー氏は、ハプニングを一切認めなかったと
聞いたことがありますよ。
練り上げられた芸こそが大切と思ったのでしょうね。
by ナツパパ (2008-06-01 09:31) 

としぽ

おはようございます。最近は芸人のサイクルも早くなっていますね。
一時的に名前が売れても残るのはほんの一握りの人だけですね。
プロダクションも方向性を見つけるのに苦労しているのではないかと
思いますね。
by としぽ (2008-06-01 10:14) 

kan

時代と共に求められる芸が変わるので
大変なのでしょうね。
by kan (2008-06-01 11:06) 

リフソロ

漫才師が漫才をやっているのを見たことがないです(TVで)。
by リフソロ (2008-06-01 22:35) 

coco030705

こんばんは。
私は昨日、桂千朝(かつらせんちょう)という落語家(米朝一門)の落語会に行ってきました。
この方は、米朝一門のベテランで、うまい落語家です。あまり一般には
知られていないかもしれませんが、会場は満席でした。昨日は桂雀々(じゃくじゃく)も出ていました。あと若手が一人。本当におもしろかったです。彼らの「芸」を堪能しました。
Y本の芸人が、お金のためにTVでくだらないことをしているのをみるにつけ、悲しくなります。売れなくなったら、きっぱりと芸人をやめたらいいんですよ。そして、まっとうに生きていけばいいと思います。
それに、大金持ちになった芸人の芸が、おもしろいはずがないじゃないですか。お金持ちになったら芸人をやめる、という法律でもつくらないといけませんね。
by coco030705 (2008-06-01 23:33) 

こぎん

激しく同感です。入れ替わりも激しいし・・・名前なんぞは憶えてもいませんが・・・。
エド・はるみに関しては、痛々しい・・・同じ感想です。
それでも言われるがままにやってしまう・・・もっと違うので勝負できるのにな~と。
あとお笑い系がシリアスな役でドラマや映画に出ることも多くなりましたね・・・美しい女優とも結婚。
笑えないお笑い番組はもう、いらないから・・・もっといい番組を制作してほしいな~。
by こぎん (2008-06-02 07:26) 

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