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天野祐吉さんのこと [新隠居主義]

天野祐吉さんのこと


天野裕吉の広告かわら版より.jpg天野祐吉の広告かわら版より


 雑誌「広告批評」の前編集長でもありコラムニストでもあった天野さんが亡くなってこの10月でもう七年になる。「広告批評」は昔から時々読んでいたけれど天野さん自身のことはあまり知らなかった。

 それが2009年の4月に30年間続いた「広告批評」の最終刊を出してからご本人はいわゆる隠居として余生を暮らすといって「天野祐吉のあんころじー」というブログを始めた。ぼくもずっと自分で勝手に隠居を標榜していたこともあるけど、昔から天野さんのあの洒脱な文章が好きだったので読者になった。

 天野さんのコメント欄で頻繁にやり取りをするうち天野さんも時折ぼくのブログにコメントを入れてくれるようになった。そんな時期がしばらく続いたけれど、ある時ぼくのブログにこんなコメントを入れてきた。「うちは犬と暮らしてます。猫もいいなあ。面倒なコメントが多くなってきたので、窓を閉めてます。よろしく。by あまの」

 天野さんは無類の犬好きだけどぼくのブログをみて猫も良いなぁという感想は以前も頂いたような気もするが、それよりも天野さんがブログの中で政権批判をしたのがきっかけだと思うが、心無い書き込みが増えたらしくコメント欄を閉めてしまったのがとても残念だった。


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 しかしそれまでのやり取りやブログの内容から天野さん自身について意外な事が分かってきた。天野さんは松山市の子規記念館の館長もしているくらいだから松山の出身かと思っていたが、幼少時代はぼくの育った東京千住のやっちゃばの近くで育ったという事だった。

 小学校の先輩でもあり、共通の知人も居たという意外な展開に世間は広いようで狭いなぁという気がした。ぼくは観られなかったのだけれど知名人が母校で授業をするというNHKの番組でも天野さんが母校の小学校で授業をしていたと小学校の同窓生が言っていた。

 天野さんのことだから隠居と言ってもじっとしているわけないと思ったら案の定、今度「隠居大学」なるものをやるので来ないかとのお誘いがあった。場所は浅草の二天門の脇にある浅草アミューズミュージアムで月一回で計6回のシリーズ。第一回は2010年6月15日でゲストは横尾忠則さんだった。狭い畳敷きの会場でその場はどこか和気あいあいとしていた。司会は残間里江子さんだったと思う。

 六回通しのチケットは写真にあるような木でできた「通り札」となっていていかにも洒落の効いた天野さんらしい企画だった。年末に行われた安野光雅さんを迎えた最後の回の後に懇親会があって天野さんと初めて直にお会いしたのだけれど、それが最初で最後の出会いだった。「そうですか、あなたがgillmanさんですか。お会いしたいと思ってました」


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 最初の隠居大学が始まったころ天野さんの後に「広告批評」の編集長を務めていた島森路子さんのインタビュー集「ことばを尋ねて」が出版されるのでモニターになりませんかとお誘いがあり短い書評を書かせてもらったのだけれど、その時送られてきた本の中に天野さんからの手紙が入っていた。

 この本が出版される時には島森さんはすでに長い病に臥せっており、本の前書きも天野さんが書いていたくらいだ。天野さんが30年間続いた「広告批評」を閉じたのは島森さんの病とは無縁ではないはず。天野さんにとって彼女に代わる人はいなかったのだと思う。でも2013年10月20日、その天野さんが突然80歳で亡くなってしまった。奇しくも島森さんもその半年前に亡くなっていた。

 天野さんの奥様伊佐子夫人の言葉「主人は、「葬儀不要」、「墓不要」、「偲ぶ会不要」、「骨は散骨で」、ということなので、命日がない」 (FB 天野祐吉の広告かわら版より)


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コメント 8

ナツパパ

出会いって不思議ですね。
望んでいてもかなわぬ時もあるし...ふと知り合える時もあるし。
そんな風な、平凡な感想ですが、そう思いました。
by ナツパパ (2020-10-11 17:06) 

JUNKO

懐かしいお顔に出会いました。せめて形だけでも真似をしたいです。
by JUNKO (2020-10-11 20:11) 

Baldhead1010

朝日新聞によく出ていましたが、お亡くなりになられてもうそんなになるのですね。
by Baldhead1010 (2020-10-11 20:55) 

TaekoLovesParis

コラムニストの天野祐吉さん、有名なかたでしたね。
東京の下町、千住のご出身でらしたのですね。gillmanさんとの親交、ほのぼのとしていいですね。天野さん、達筆ですね。とても味のある筆跡。
by TaekoLovesParis (2020-10-13 11:06) 

evergreen

学生の頃、深夜放送のコメンテーターによく出ていて、
照れ笑いのような顔に、
番組が取り上げた話題そのものを切り捨ててしまうような鋭さが隠れていて、
針小棒大なテレビに辟易していた僕には、
清涼剤のような人でした。

so-netでブログを初めてから天野さんのブログを知り、
亡くなられた今でも読者登録したままです。
by evergreen (2020-10-13 15:04) 

fumiko

私は上野『うさぎや』のどらやき大ファン、あんは“粒あん”です。
天野氏は“こしあん派”です。ある時、「粒あん派とは付き合いたくない」と書いていたのを見て、「“あん”でそこまで言うか」と思い、ブログに思いを書きました。その後、雑誌で、天野祐吉vs横尾忠則のあん対談があり、粒あん派の横尾氏がうさぎやのどら焼きを褒めていた記憶があります。
天野氏が亡くなる何年か前に出演なさっていたNHKのスタジオパークで、あん話題になり、「粒あん派はブリーフ、こしあん派はトランクス」の持論を展開。Faxによるアンケートでは、それが見事にズレていて、ご本人は「そんなはずないと思っていたけど」とコメントなさっていました。天野氏のあん論、貼付しちゃいます↓
https://amano.blog.ss-blog.jp/2008-04-21
天野氏のお名前を聞くと条件反射的に“粒あん”への思いが爆発(笑)
あっ、gillmanさんのお父上は和菓子屋さんでしたね。
by fumiko (2020-10-16 22:38) 

kuwachan

朝日新聞に連載されていた「CM天気図」楽しみでした。
by kuwachan (2020-10-17 18:13) 

coco030705

天野さん、TVにも時々出演されていて、鋭い批評がいいと思って何時も見ていました。gillman さんと交流があって、お二人の会話がきっとたのしいものだったのだろうと、想像しています。
お亡くなりになった後も、「葬儀不要」、「墓不要」、「偲ぶ会不要」、「骨は散骨で」とは天野さんらしいですね。気骨のある方とは天野さんのような人のことをいうのだろうと思いました。
by coco030705 (2020-10-19 12:04) 

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