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落 葉 [新隠居主義]

落 葉

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 ■落 葉」 ポール・ヴェルレーヌ 
秋の日の
ヴィオロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。
鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。
げにわれは
うらぶれて
ここかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。
    (上田敏訳 「潮海音」より)


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 枯葉の季節になると上田敏の訳したこの「落葉」を想い出すけれど、最初はヴィオロンがヴァイオリンのことだとは知らずに口調が良いので何となく詩全体をそらんじていた。確か映画「地上最大の作戦」の冒頭のシーンだったと思うのだけれど、フランスのレジスタンスがノルマンディー上陸作戦の決行の合図を待ってラジオに聞き入っている時この詩が流れてきたのを覚えている。

 それはレジスタンスに向けての上陸作戦決行の合図だったのだけれど、それにヴェルレーヌの詩が使われるなんて粋だなぁ、と思った。上田敏の訳は調子も良く実にリズミカルだけど、要は今でいう「超訳」みたいなもので必ずしも原作に忠実ではないらしく、それ自体を一つのすばらしい新たな作品と考えても良いのだと思う。内容的には金子光春の訳のほうを読んで、あぁそういうことかと、かなりはっきりと理解できたのだけれど、それでぼくの中の上田敏の訳の評価が下がったというわけではない。


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 ちょっと晴れ間が出たので、ひさしぶりにスマホとミラーレスカメラをもって散歩にでた。いつも行く近所の公園ではなくて、反対側にあるやはりすぐ近くの公園にイチョウを見に行く。こちらの方が近いので歩いて行きやすいということもあるけれど、毎年ここのイチョウ並木のイチョウが見事に黄葉することを思い出したからだ。

 昨日の雨で大分葉が散ってしまったけれどまだ何とか…。イチョウ並木の隣が工業高校になっているので、時たま学生が自転車で通るのだけれど…。平日の10時くらいなのに何をしに行くのだろう。かと思えば、オジサンがビールらしきものを飲みながら自転車で通り過ぎてゆく。

 日常のなんでもない風景が自分の前を当たり前のように過ぎ去ってゆく瞬間が何とも愛おしくて、楽しい。やっとカメラを持って少し歩けるようになったので、また少しづつ持って歩こうと思う。

    ■ 敷きつめし 銀杏落葉の 上に道 (池内たけし)

 

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 今の時期の曲の定番と言えば「枯葉」。晩秋になるともう耳にタコが出来るほど聞かされた曲だけど、アレンジを楽しむ余地はまだまだある。そんな中でも正統的で大人の雰囲気があり深く心にしみる「枯葉」の一曲がデ・フランコのクラリネット。彼のアルバムThe Artistry Of Buddy De Franco(1954)の中に入っている一曲。

 アート・ブレイキー等とのカルテットを解散しソニー・クラーク達との新しいカルテットで吹き込んだLP。この中では何と言っても5曲目の「枯葉」が最高。枯葉はいろんなアーティストが演奏しているがぼくはBill EvanceそれにWynton Kellyの枯葉と並んで彼のこの演奏が大好きだ。

 DeFrancoのしっとりとしたクラリネットに寄り添うようなSonny Clarkのピアノもたまらない。アルバムタイトルの「Artistry=腕前、技巧」というところにもDeFrancoの意気込みが感じられる。12月はデ・フランコの祥月命日の月でもあるので…。

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[personnel]
Buddy DeFranco (cl)
Sonny Clark (p)
Gene Wright (b)
Bobby White (ds)


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