SSブログ

グリンツィング徘徊 [gillman*s Lands]

グリンツィング徘徊

IMG_7574.JPG
 

 帰る前の日になって、やっぱりウィーン郊外のハイリゲンシュタットに行きたくなった。前回ウィーンに来た時ヴァッハウ渓谷まで遊びに行った帰り鉄道でKrems(クレムス)からHeiligenstadt(ハイリゲンシュタット)に出たので寄りたかったのだけれど、結構疲れていたのでそのままウィーンに戻ってしまった。

 ハイリゲンシュタットに行きたいと思ったのは、50年近く前に初めてウィーンに来た時に宿を探してそこら辺をうろついたことがあって、また行ってみたくなったのだ。それにハイリゲンシュタットの近くのグリンツィング地区にはホイリゲが多いので、最後の晩をそこで飲んだくれて過ごしたいというのが本音。(帰ってきてから調べたら1970年にハイリゲンシュタットを訪ねたときの日記があった。↓)

 ■1970・5・4 ウィーン 晴
 朝8時頃ユースホステルを出て、シュネルバーン(国電のようなもの)とシュトラーセンバーン(路面電車)を使って、ハイリゲンシュタットに行く。英語やドイツ語で何回も何人にも聞いて、やっとベートーベンの住んでいたエロイカ・ハウスにたどりついた。

 中は修理中とかで大工の他は誰もいなかった。家の前に立っていた女の人に聞いたら、話は半分位いしかわからなかったが、どうやら僕なぞベートーベンを知っているはずがないというような口ぶりであった。

 宿を探しながらグリンツィングまで歩いてゆく。味わいの深い街だ。近くのレストラン「グリンツィンガー亭」で食事をする。いたる所に杉の小枝を軒先に下げたホイリゲがある。…

 ということで、今回は3時からウイーンでペーター教会のオルガンコンサートを聴いた後カミさんともう一人年配のご婦人を伴ってシュテファンプラッツから地下鉄に乗ってショッテントーア駅まで行き、そこから38番のトラム(路面電車)に乗ってグリンツィングに行った。終点で降りてメイン通りに出たけれど、どうも様子が違う。もちろん50年前だから記憶も殆どいい加減なものになっているのだけれど…。

 そのうち気が付いたのは昔はハイリゲンシュタット駅で降りてグリンツィングに向かって歩いたのだけれど、今回はグリンツィングでトラムを降りているから要は逆コースになっているらしいということ。坂道を上がったり下りたり途中で人に聞いたりしたけれど、なにしろぼく自身が方向音痴なのであまり進展しない。そこらへんは50年前と少しも進歩していないのだ。

 但し、お陰で昔は通らなかったグスタフ・マーラーの葬儀が行われたプァル教会(Grinzinger Pfarrkirche)の前を通った。そのすぐそばに彼のお墓もあるのだけれど今回は一人ではないし脚も疲れてきたので、とにかくどこかのホイリゲに入らねばと、既に日が傾き始めていることもあって先を急いだ。そういえばあの教会でのマーラーの葬儀の様子を音楽家のシェーンベルクが絵に描いていて、その絵を先日国立新美術館で行われた「ウィーン・モダン展」で見たばかりだった。マーラーの葬儀の日は嵐のような雨模様だったという。



IMG_7581.JPGIMG_7575.JPG
IMG_7587.JPGIMG_7582.JPG


 結局、昔歩いた路地や入った店のある辺りはずっと坂を下りた先にあることが分かって、途中のどこかのホイリゲに入ろうということになり、坂の中ほどにある良さげな店に入った。本来なら今頃の時間は観光客でここら辺はごった返しているはずなのだが、もうシーズンオフに入ったと見えて客は数人しかいなかった。

 入ったお店はBach-Henglという店で後でガイドブックを見たら出ていて、以前クリントン大統領も来たことがあると書いてあった。と言っても料金はいたって庶民的で白ワインを結構飲んで料理もそこそことったのだけれどかなり安かったのでこの店にして正解だった。きっとシーズン中はもっと高いのかもしれない。

 ぼくらが飲んでいるうちにかなり客も入ってきて、隣のテーブルに来た髭面の南ドイツのオジさん一行と意気投合してはしゃいで飲みすぎた感がある。その一家は毎年今頃この店に来ているらしい。各テーブルを回っているバイオリン弾きのオジさんがプーチン大統領そっくりなので、似てるねというとよく言われると苦笑いしていた。

 ジョッキで飲む白ワインはいくらでも飲めてしまいそうだったけど、まだ二人のご婦人を路面電車と地下鉄を乗り継いで無事ホテルまで連れて帰らねばならないので…。でも、やっぱり酔っていたらしくホテル近くの地下鉄の駅に着いたら出口を間違えてしまった。市立公園の冷たい夜風に吹かれながらほろ酔いの意識の中で「また来たいなぁ」とつぶやいた。


IMG_7576.rcJPG.jpg


ウィーンの紋章.jpgLands.gif




nice!(54)  コメント(6) 
共通テーマ:アート