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桜咲く [gillman*s park]

桜咲く

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 さまざまの事 おもひ出す 櫻かな (松尾芭蕉)

 日本人は桜を見るとなぜか感慨深くなるようだ。ぼくもその例外ではない。満開の桜を見たときいつも心に浮かぶのは西行法師の「願はくは花の下にて春死なむ そのきさらぎの望月の頃」という歌と、この松尾芭蕉の「さまざまの事 おもひ出す 櫻かな」という句だ。特に芭蕉の句は俳聖らしくないと言えるほど、直截に感慨を述べているところが逆に気に入っている。

  芭蕉は元は下級武士で伊賀上野で侍大将の藤堂良忠に仕えていた。その良忠が25歳という若さで急逝した。その時芭蕉は23歳。それがきっかけかどうかはわからないが、芭蕉は藩も武士の身分も捨て俳諧になった。その芭蕉が二十数年後に故郷伊賀上野を訪れた際にこの句を詠んだと言われている。芭蕉は藤堂家の花見の席によばれ、そこでこの句を詠んだらしいのだが、藤堂家は以前仕えていた良忠の息子の藤堂良長が当主になっていた。芭蕉は既に四十歳半ば、万感の思いだったのではないか。

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 桜が咲くと若いころはただ浮かれていたけど、歳をとってくるとそういう気分ばかりではない。もちろん心が華やぐのは以前と変わりないのだけれど、桜が長い間に自分の中で巡りくる季節のひとつの象徴のようになっていることに気が付く。あと何回この桜が見られるかな。そんな言葉が頭の後ろでささやかれているのを感じる。そして桜はあっという間に過ぎてゆく「時」の象徴にもなってゆく。

 結婚三十年を記念してこの公園に桜の苗木を植えたのは2006年のことだった。背丈よりも幾分か高い、か細い枝の何となく頼りなさそうな若木だった。その若木が今では春になると見事な花を咲かせその下でお花見ができるほどの立派な桜に育った。昨日もその桜の木の下でお花見をしたのだけれど、時折吹く強い風が寒いくらいに感じられた。強い風に花をつけた桜の枝が大きく揺さぶられていたけれど、しっかりと根をはった桜の木はもう若木の時のように木全体が揺れ動くことはない。

 今年の桜は比較的花の持ちが良い。開花してから暫く肌寒い日が続いたのが幸いしたのか。それでも、まぁ桜はいつものように駆け足で去ってゆくことに変わりはない。桜が駆け抜けていった後の気分をぼくは勝手にサクラ・メランコリーと名付けているんだけども、救いといえばその後に今度はまぶしいような緑の季節がやってくることだ。それを目にすると、また明日からやってくる新たな「さまざまの事」に立ち向かおうという元気が戻ってくるような気がする。



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 *今いろいろなところで、かつて一斉に植えられたソメイヨシノがその寿命を迎え問題になっているようです。と言ってもソメイヨシノの寿命が本当に人間の寿命と同じくらいなのか、それは恐らくソメイヨシノの木が全ていわばクローン的存在であるところからきているようですが、まだ新しい品種なので本当のところは判らないようでもあります。

 一般的には植物自体にはそんなに明確な寿命というものはないみたいなので、ほかの品種の桜の古木のように千年桜にならないとも言えないのでは…。

 公園の桜に目を取られていましたが、丘の裏側には艶やかなツバキの花がまだしっかりと咲き乱れていました。それはまた桜とは違った感慨を与えてくれました。

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< Ansicht 05 SAKURA Chronicle >

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月に叢雲、花に風/2016
Sakura Melancholy/2015
さくら時計/2015
感性の復讐/2013
約束の花Sakura/2013
死ぬなら今だ/2010
花冷え/2010
さくら散る頃/2008
桜吹雪 移動祝祭日のように/2008
さくら さくら/2008
薄墨色の桜/2007
桜散る/2006
桜吹雪/2006
病院の桜/2006
夕暮れの桜/2006


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ZZA700

自分で植えた木の下でお花見ができるなんて最高ですね。
千年桜になったらさらに素敵^^
by ZZA700 (2019-04-07 16:21) 

coco030705

こんばんは。
一番下の小さいお写真の桜が、植樹された桜なんでしょうね?とてもきれいです。
芭蕉は、武士の出だったのですね、知らなかったです。この句は、すごく素直な句だと思います。私も色々なお花見のシーンが、走馬灯のように思い浮かびます。
これからどんな世の中になっていくのか、不安がありますが、何を大事にして、何を止めるのか、考えなくてはいけない時期がきているかもしれません。
by coco030705 (2019-04-09 19:49) 

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