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Bon Dia! Lisbon [gillman*s Lands]

Bon Dia! Lisbon


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 リスボンの朝。古い街区であるアルファマ地区の路地は、石畳を洗う水で雨が降った後のように濡れていた。人々がポイ捨てした吸い殻や犬たちの落し物がそれできれいに流されるというわけだ。人々が動き出して、段々と活気が出てくる。路地裏の小さな店でリスボンの交通機関の一日券を買っていると、店の前の通りが交差する角におばさんが店を広げだした。

 店と言っても濡れた石畳の上に白い布をひきつめて、その上に次々と商品らしきものを並べてゆくだけ。商品はどうやら女性の下着がメインのようだ。そんなに人通りが多い訳ではないと思うけど…。しばらく見ていると、その内集金袋のようなものをブル下げたオジサンがその通りの角に立ってウロウロし始めた。

 オジサンは盛んに露店の方を気にしているんだけど、おばさんに話しかけるでもない。それともぼくが一日券を買った店に用があるのか。その店は駄菓子屋みたいにお菓子なんかも売っているけど、宝くじも売っている。店の中には近所のおばあさんやおじいさんらしい人が宝くじを買ったり、以前買ったのが当たっているかのんびりと見てもらったりして、狭い店の中はちょっと混んでいた。

 やがて通りかかったおばさんが店?の女性と何やら親しげに話して下着の品定めをしている。暫くしてその中から何点かを選んで買って行った。なんかリスボンの庶民の朝の雰囲気がマンマンでいいなあ。此処はもっと若い時に来たかったなと思った。靴の底が擦り切れるほどにこの坂の街を歩いて…。


 考えてみたら確かにポルトガルは今回が初めてだけれど、国境までは大昔に一度来たことがある。1971年の2月19日、友人とドイツから車でスペインの南端のアルヘシーラスまで行って、そこに車をおいてその前年の夏に続いて二度目のモロッコカサブランカまで行った帰り、セビリアを出てアラセナで一泊してから北スペインに抜ける前にポルトガルの国境が近くそこを超えればリスボンまですぐなので寄ってゆこうという魂胆だった。

 今はポルトガルもEUの一員だから国境が無いようなものだけれど、当時は国境の検問所もあって、その時はスペイン側とポルトガル側の間に両側がフェンスに囲まれた細く長い一本道があって、そこは丁度国境の中間地帯の様なものだったのかもしれない。その一本道を抜けると少し開けたところに出て、そこに国境検問所と事務所があった。

 そのまま入国できるものと思ったら、ポルトガルに入るにはビザがいるという。即時発行ビザは国境の事務所で発行できるけどそれには100エスクードかかるということだった。今はEUになったのでどこでも€(ユーロ)だけども、当時はスペインはペセタでポルトガルはエスクード。100エスクードと言えばいくらくらいか、たぶん1000円くらいのものだったと思うのだけど…。

 貧乏学生にはそれでも高く感じられて、それに幾分かをエスクードに替えなければならないし、そうすればロスもでる。ぼくの財布には小銭レベルだけどモロッコのデルハムとスペインのペセタ、その前に通ってきたフランスのフラン、それに虎の子の幾ばくかのドイツマルクがごっちゃに入っていた。結局、それならいいや、と断ってスペイン側に戻った。

 もちろん今だったら入国を迷うことはないけど、その時はポルトガルだってスペインとそんなに変わらないだろう、位いの気持ちでいた。あの頃にもしリスボンに入っていたら、この街の虜になっていたかもしれない。今でもポルトガルの国境についたときの国境警備員のBon Dia!(こんにちは)という陽気な声が耳に残っている。



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ZZA700

石畳にモノクロ写真は妙に合いますね^^
by ZZA700 (2015-12-14 20:01) 

ナツパパ

暮らしやすそうな雰囲気ですねえ。
ツアーであわただしく通り過ぎるのが勿体ないような。
せめて一週間は。
by ナツパパ (2015-12-15 10:18) 

engrid

靴の底が擦り切れるほどにこの坂の街を歩いて…。
旅の楽しみは、歩くことから始まるような気がいたします
by engrid (2015-12-17 01:12) 

nicolas

「ボンジーア」!アフリカ・南米、世界各地何か国も使われているポルトガル語、かつての国力は今の姿からは想像もできないです。
若い時のお話、スゴイですね。車で移動されたんだー。
国境、かつては確かにありましたね。ユーレイルパス買って電車で移動しても、電車の中で検札パスポート提示、懐かしくなりました。
by nicolas (2015-12-18 20:30) 

aya

これで商いが成り立っているんですね、以前から
不定期にここにきているおばちゃんって感じでしょうか、日本も
昔は道端で野菜とか売ってたなぁ、お兄さんがまけてくれて
「資金貯めて 店もつんや」って。 あのお兄さんは店持てたのかなぁ
by aya (2015-12-20 18:45) 

Abraxas XIV.

あれが、約45年も前だったなんて、信じられませんね。国境の道もまだ印象に残っていますね。
by Abraxas XIV. (2015-12-26 10:10) 

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