SSブログ

八重山諸島へ ~波照間島の食と酒~ [gillman*s Lands]

八重山諸島へ ~波照間島の食と酒~

DSC07046rs.JPG

 
 紋切り型で極めて図式的に波照間島を一言で言うなら、その島はサトウキビヤギ泡波の島ということになるかもしれない。もちろん二三日いただけで島の何が分かるわけでもないけど、少なくとも目で見る限りでは島の何処へ行ってもサトウキビとヤギが視界にとびこんでくる。
 実際、ぼくの泊まった宿の周りもサトウキビ畑だし隣は波照間製糖の工場だった。また宿の入口の処にはヤギがいた。このヤギは夏のシーズンに宿の前のコテッジでショップをやっている人が飼っているみたいで、名前はココちゃんという。とても可愛がられているらしく人懐っこくて毛並みもツヤツヤしている。手を出すと「お手」をするし、えさをあげるとお辞儀もする。

 動物の背中を撫ぜてみると、猫は猫、犬は犬らしいその動物独自の感触が伝わってくる。猫はビロードのような手触りのしなやかな背中、犬はちょっと荒目の毛ざわりの下に真っ直ぐな背骨を感じる。ヤギの背中はがっしりとして、白い剛毛の下に山脈のように突き出た一つ一つの脊椎骨の存在を感じることができる。

 ぼくはヤギを見ると何か懐かしい気分になる。ウチのばあさんが言うには、ぼくがまだ赤ん坊の頃、ばあさんは(もちろんその頃は、婆さんではなかったけれど)母乳が出なかったので親父が田舎からヤギを一頭連れてきて、そのミルクを飲ましていたらしい。それでぼくはヤギの姿を見るといつもオッパイを欲しがって泣いたらしいのだ。そんな潜在的記憶のためかもしれない。

 ココちゃんの飼い主に聞くと、このヤギはペットなので名前がついているということだった。しかし、島で見かけるほとんどの山羊には名前はついていない。それはペットではなくて食料用だから。宿の人に聞くと島で毎年行われる大運動会の時などに潰して食べるのだという。「潰す(つぶす)」という言い方が妙に生々しかった。沖縄ではヤギは昔からの御馳走だから、ヤギ肉のヤギ汁や内臓も入った中身汁などにして食べる。それは結構匂いがきつい場合もあるのでぼくは苦手だ。

 以前、何度か泊まった沖縄本島の具志頭(グシチャン)の宿のオヤジにヤギ刺しの冷凍したのを食べてみろと言われて食べさせられたことがあるけど、生涯忘れないような異様な匂いと味だった。それはもちろん冷凍で新鮮なヤツではなかったのが原因なのだけど、もう結構。その時オヤジは「そうか、ヤギはダメか。今度来たときはマングースを食えるようにしておいてやるよ」と、それはもっと結構。

 島の名物は今では何と言っても幻の泡盛と言われた「泡波」かもしれない。その泡波は集落のはずれにある波照間醸造所で作っているのだけれど、そこは泡波の旗が立っていなかったら絶対通り過ぎてしまうほど小さな構えの家だ。従って生産量も少ないから内地では、さらには波照間島でも観光客には中々手に入らない。集落の共同販売所に行けば100ml入りのミニボトルが買えるので買い込んでゆく日帰りの島巡りの観光客も多い。そこでは一人ミニボトル5本までとなっていた。

 幸い泊まった宿では泡波の600ml瓶を食堂や部屋でも呑むことができたのでしこたま呑んできたが、現地で買えば(もちろん買えればの話だけれども)700円弱のこの瓶が家の近くの沖縄物産店では6800円で売っている。ネット通販でも高い店は9000円くらいしていた。

 島の中を歩き回って集落の中央にある広場で一休みする時、近くの共同販売所で買ってきた泡波のミニボトルを開けた。日陰に入って、ベンチに腰かけてミニボトルのキャップを開ける。手元にコップが無いので泡波をそのまま口に含んで、後からチェイサーでミネラルウォーターを口につぎ込む。

 泡波を一口くちに含むと、何とも言えない甘さが口中に広がる。その後に泡盛独特のあの香りがやって來る。うん、たしかに美味しいなぁ。都会の人間がそんなに騒ぎ立てるほど美味しいかどうかは分からないけど、島で呑むこの酒は確かに天下一品、美味い。昔から言われているように酒は土地の賜物。酒はその土地で呑むに限る。

DSC07015rs.JPG


Islands.jpg


DSC01305r.JPG20140124_113922.jpgDSC01245r.jpg
DSC01256rs.JPG

(cam:NEX-7/TX30/Galaxy)


 *波照間で日本最南端のおでん屋に行った。集落の波照間小学校のすぐ近くにある「ぶどぅまれー」は確かに最南端のおでん屋さんでしたね。但し、おでん屋さんといっても焼きそばもチャンプルも美味しかったし、おでんは予約が必要と言うことだったので初日は焼きそばなどを食べて予約をして次の日にまた行っておでんを食べました。

 それが上の写真の左の方のおでんです。お皿の上にドンと乗っているのがてびちです。見た目はちょっとグロいですけど、コラーゲン好きにはたまらないでしょうね。実はこのお店は波照間に来る前の晩、石垣島で友人と行ったおでん屋さん「めんがてー」で教わってきました。めんがてーの女将さんの妹さんが波照間島でおでん屋さんをやっているので食べ比べてみてちょうだい、と言うことでやって来ました。

 石垣のお姉さんのお店のてびちおでんが上の右の写真です。具は同じようなものが入っていますが、上に乗っている野菜が石垣のお店がホウレン草であるのに対して、波照間のお店は自家製のからし菜でした。どちらも美味しかったのですが、石垣の方は全体に脂分が良く乗っていたのに対して、波照間のお店の方は見た目はさらっとしています。でも、味は波照間の方が昆布の出汁が十分にしみてしっかりとした味付けだったように思いました。どちらも美味ではありました。


nice!(49)  コメント(11) 
共通テーマ:アート

nice! 49

コメント 11

mimimomo

こんにちは^^
ノンビリとした印象ですね。
何だか泡波が飲んでみたくなりますが、こちらで
6千数百円、9千円と聞くと、止めときましょう・・・(--

by mimimomo (2014-02-10 13:41) 

aidesu

泡波ってなんでプレミア付いてるんですか?
定価で呑めるんでしたら一度飲んでみたいです。

栄町もいい味だしてますよね^^
by aidesu (2014-02-10 15:26) 

Silvermac

沖縄のおでんも同じでしょうか。
by Silvermac (2014-02-10 15:28) 

engrid

やぎ、沖縄の方は事も無げに言われます
何かの折に、潰して、その表現聞きます
暮らしの中に、いきていますね
by engrid (2014-02-10 17:03) 

ZZA700

やぎも芸をするのですね。可愛いですね^^
by ZZA700 (2014-02-10 18:35) 

テリー

八重山諸島、泡盛、懐かしいですね。昔、沖縄、石垣島、西表島を旅行しましたが、その時、飲んだ泡盛が、懐かしい。今は、余りお酒も飲めなくなって、もう、八重山諸島に行くことはないでしょう。
by テリー (2014-02-10 22:32) 

sig

ヤギとパノラマ写真を見たら、行きたくなりました。けれど、てびち はちょっと・・・。笑
by sig (2014-02-10 23:00) 

ryang

ヤギのミルクは栄養が豊富ですもんね。

てびち、私もコラーゲン好きです(^^
by ryang (2014-02-11 00:39) 

kuwachan

私も日帰り組のひとりでして^^;港のお土産屋さんで
手ぬぐいとセットになった泡波のミニボトルを発見して
買ってかえりました。

by kuwachan (2014-02-11 10:32) 

aya

寒い時は沖縄に行きたくなります、 私が行ったのも12月。
寒かったのを覚えています。暖房器は無いよと言われました(笑)
ヤギの目って 太文字のハイフンみたいで いつも不思議だなと
思ってみています。
by aya (2014-02-22 22:28) 

blanc

ヤギのミルクってどんな味がするのだろう?何だか濃厚そうですね。
お酒の値段がそんなに違う事にもびっくりしました。
by blanc (2014-02-25 12:28) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント