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食べるとは想うこと [新隠居主義]

食べるとは想うこと

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 「寒鱈まつり福興市」は南三陸町の小高い丘にあるベイサイドアリーナで行われていた。そこにはスポーツ交流村という施設があるが、福興市の会場はその前の広場の吹きさらしの戸外だから風が身を切るほどに冷たい。その日は大型の寒波に見舞われてこの冬一番の冷え込みと言うことで零下の気温だった。

 広場にはステージカーというのだろうか、ウイングを開くとステージが現れる大きな車がおかれて福興市のプラカードが掛かったステージが設けられている。その前には観客席兼休息スペースとしてビールケースに板をわたした急作りのベンチが置かれている。

 ステージでは南三陸町の町長や実行委員長の山内社長などによる「福まき大会」が行われていた。豆やお菓子の入った小袋を、節分の豆まきの要領でステージからまくのだが、袋の中に当たりの券が入っていれば商品がもらえる。一等はなんと大きな寒鱈まるごと一匹。大勢の人が先を争って福まきの袋をとろうと手を伸ばしていた。

 そのあとステージでは応援に来た歌手達のライブが随時行われた。その日は歌手のオオゼキタクやクリステル・チアリやサンプラザ中野くん等がライブを行った。そのライブの合間合間に急作りの観客席は露店で買い求めたものを食べるスペースとなる。いくつかの通りに区分された広場には多くの食べ物屋のテントが並んでいる。
 
 この寒さだから何と言っても鍋ものが人気だ。脂の乗った「寒鱈のあら汁」、海の幸一杯の「海賊鍋」、すいとんのような「はっと汁」、「あずきばっとう」と呼ばれるお汁粉にほうとうのような太い麺が入ったもの、それに熱々の豚汁もある。店先で立って食べている人もいるがステージ前の席に持ってきて一家で食べている人達もいる。みんな背中を丸くして湯気の出ているカップに顔を突っ込まんばかりにして食べている。

 みんな何を想いながら食べているのだろうか。冬空の下での熱々の鍋は身体だけでなく、心も温めてくれるはずだ。考えてみれば、あの津波で海は街を根こそぎ持って行ってしまったが、今ぼくらはまた海の恵みで身体と心を温めている。熱い寒鱈のあら汁が食道を通って胃の腑に吸い込まれてゆく。海と、海に奪われた命と、食べられる魚の命と、それを獲った漁師達の想いが身体に溢れてゆく。ぼくもそのことを想った。食べるとは想うことなのだ。

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 *山内鮮魚店の仮店舗で海鮮丼を食べました。シンプルなものですが新鮮な海の幸が身体に浸みわたります。ぼくなんかは単純にまた漁が始まればすぐ以前のように…、と考えていましたがもちろんコトはそんなに単純ではありません。

 海で獲れた魚がどういう手順を踏んでぼくらの手元に来るかを全く知らなかったのでそれも無理からぬことだと思いますが、山内さん達にとっての復興の第一歩はまず鮮魚を保存する冷凍庫、製氷工場そして加工のための汚水処理施設の建設から始めなければならなかったということを知ってその道のりの険しさを痛感しました。


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engrid

味わい消費する。
そこに至るまでの過程が復旧するには、多大なご苦労があることですね
いまさらに思います、
どうしたら、やはり心にかけて、使っていくことでしょうか
by engrid (2012-02-06 15:32) 

Silvermac

興石幹事長の議員歳費削減に対する言葉「政治家にも生活がある」、三千万円以上の歳費が支払われる者が口にすべき言葉ではない気がします。
私達の拠金がどのように使われているのか、全く知らされません。将来も大切ですが、今は何よりも復興に全力を挙げてほしいと思います。
by Silvermac (2012-02-06 21:15) 

green_blue_sky

ガンバ君への温かいコメントありがとうございます。
by green_blue_sky (2012-02-07 07:53) 

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