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Lied der Nacht 夜の歌 [Music Scene]

Lied der Nacht  夜の歌

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あっと言う間に12月になってしまった。もちろん10月や11月を飛び越していきなり12月になったわけではないのだけれど、気持ちの上ではそんな感じだ。若い頃は「一年なんてあっという間だよね」という大人たちの会話に、へぇそういうもんなんだとぼんやりと耳を傾けていたが、気がついたらいつの間にか自分がそういう会話をする側になっていた。

 毎年12月を迎えるたびに時が加速度的に過ぎ去ってゆくことを感じる。仕事をしている時代に12月を迎えた時の「時」の速さの実感は「もう12月になってしまった、なのにアレもコレもまだ片付いていない…」という感覚だったが、今はすべきことが山積みになっているわけではない。なのに時が足早に自分の前を過ぎ去ってゆく実感は以前にもまして強くなっている。

 12月は時の流れを実感させてくれる月だ。街の様子も前の月とはガラッと変わってくる。久しぶりに2週続けて赤坂のサントリーホールのコンサートに行った。両方ともワレリー・ゲルギエフ指揮のロンドン交響楽団のコンサートだった。2回ともマーラーの交響曲が中心のプログラムだった。

 11月26日の回の時、ちょっと早めに行って広場の見えるカフェで飲んでいた。開場までまだ時間があるためかホール前の広場は閑散としている。二回目のコンサートは12月1日だった。前回と同じように早めに着くと、ホール前の広場にはこの前とは打って変わって無数のイルミネーションが輝いている。あ、もう12月なんだ。

 コンサートは二回ともすばらしかった。特に2回目のマーラーの交響曲第9番の最後の楽章の消え入るような静寂の空気は今までのどのコンサートでも味わったことのないものだ。曲が終わってもゲルギエフが指揮をしたその腕を下ろすまで、おそらくは15秒以上もの間、観客の息一つの音もしなかった。聴衆も見事だった。

 興奮の冷めないまま外に出る。無数のイルミネーションが森の木々にとまった季節外れの蛍の群れのようにまたたいて輝いている。一緒に行った友人とビールを一杯だけ飲んで帰ろうということにして広場の前のバーに入る。光のゲートの向こうから一瞬、マーラーの夜の歌が聞こえてきたような気がした。

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 <Concerts>
 11月26日…指揮:ワルター・ゲルギエフ ヴァイオリン:諏訪内晶子 ロンドン交響楽団
        ①シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
             ②マーラー 交響曲第一番 ニ長調 「巨人」
 12月1日…指揮:ワルター・ゲルギエフ  ロンドン交響楽団
        ①マーラー 交響曲第九番 ニ長調


*今回は友人のおかげで両方のコンサートとも指揮者の息吹やうめき声まできこえるような前列2、3列の席で聴くことができました。若い頃であれば、コンサートが終わり次第、耳の中にその音色が残っているうちに家に飛んで帰って自分のオーディオの調整をするところなんですが、今はもうただ音楽の余韻に浸っていたいという気持ちが強くなりました。

 それはエネルギーが枯れてしまった老化なのか、それとも音楽との付き合いが変わってきたのか。自分では後者の方だと思いたいんですが… 

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コメント 6

お茶屋

あっという間に過ぎ去る月日を・・・
確かに意識できるよう 日々ホッと一息
お茶しております^^♪
by お茶屋 (2010-12-03 12:39) 

Silvermac

12月は親しかった方の喪中を知る寂しい月です。
by Silvermac (2010-12-03 18:33) 

sera

お久しぶりです♪
コンサート、いいですね~
暮は特に♪
写真、面白いです~特に2番目がいい絵♪
by sera (2010-12-06 21:59) 

fumiko

>エネルギーが枯れてしまった老化なのか、それとも音楽との付き合いが変わってきたのか
ふふ、私はgillmanは後者だと思っていますよ!
by fumiko (2010-12-07 01:24) 

rantan-nya

今年は、つい最近まで暑かったせいか、いつもよりさらに、あっという間に
12月になった気がします
やはり、音楽との付き合い方が変ったのでは^^ 
生というか、ありのままが素晴らしく感じ、それをそのまま温めておきたい・・
うまく言えませんが、そんな風に
by rantan-nya (2010-12-08 10:50) 

e-g-g

ゲルギエフと諏訪内さん、魅力的なプログラムですね。

>音楽との付き合いが変わってきた
のだと思いますよ。

私も若い頃は何かに憑かれたように「聴くべきもの」を
追い求めていたような気がします。
ま、新しい音楽を聴き続けるのに疲れたとも言えますが、
それでも気持ちに届く音楽はありますから、
そんな音楽を丁寧に聴いていきたいですね。
by e-g-g (2010-12-09 18:07) 

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