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昭和五十一年二月号 [あの時の文春]

あの時の文春  


30年の時を越えて 昭和五十一年二月号(1976)

Ansicht
TK-80のショック
 
 文春の広告を見ていると30年の時の流れと言うものが感覚的に伝わってくる。もう姿を消してしまったものから、三十年経ってもほとんど変わっていないもの、また姿を変えて残っているものもある。ざっと見ていて商品として見た目が一番変わらないのはプレステージの高い時計のようだ。オメガやウォルサムやロンジンなどはデザインもイメージも余り変わらない感じがする。

  一番姿を消していったのは、高級ライターや高級喫煙具の広告だ。デュポンやカルチェのライターやロンソンやダンヒルのバイプなどの広告はすっかり姿を消してしまっている。商品自体も世の中の主流ではなくなっている。デザインが変わりながらも生き残っている商品の代表は車とカメラであろう。僕なんかはその二つの商品のデザインの移り変わりを見ていると自分の人生がダブって見えてくる。その車とカメラも今や、ハイブリッド車とデジタル・カメラという大きな転機を迎えているようだ。

 この年つまり1976年のこの号の広告にデジタル時計の広告が出ている。メーカーはアメリカのパルサー社。(記事下の写真) 名称はTime Computerで、そのときの価格でステンレス張りのものでも140,000円もする。初任給が10万円そこそこの時代だから大変な値段だ。デジタルと言うだけなら今の粗品でもらう時計と基本的には変わりはない。今、デジタル時計にそんな金額を出す人間はいない。一方、高級時計もそのムーブメントはメカニカルなものからクォーツに変わっていっているから変化自体は進行しているのだ。

 なんと言ってもこの30年間の商品の一番の変化はコンピュータに代表されるエレクトロニクス関連商品の分野だ。この分野は30年前には商品自体がほとんどなかったのだから…。
 この年僕にとっては衝撃的な商品が発売された。NECのワンボード・マイコンと呼ばれたTK-80である。トレーニング・キットだったがコンピュータのプログラミングが自分で出来て、動かせるいわば初めての個人用コンピュータといってもよいものだった。



 構成は今で言うマザーボードとテンキーそれにデジタル表示装置だけの簡単なものだが、リリースされたときの興奮は大変なものだった。当時、結婚したばかりの僕は50回払いのローンでTannoyのスピーカーを買ったばかりだったが、かみさんに怒られるのを覚悟で秋葉原にとんでいった。しかし残念というか幸いというか、予約でいっぱいで結局手に入れることはできなかった。数年後、やっとBasic言語で動くシャープのマイコンを手に入れた。(その頃はマイコンと呼んでいた)当時の雑誌に「将来はコンピュータがいろいろな家庭電気製品に組み込まれ、一つの家庭に何台ものコンピュータが存在するようになるだろう」という記事が出ていたが、にわかに信ずることはできなかった。

 僕の買ったシャープのマイコンの専門誌を出している会社があったので、その出版社の社長に会いに行った。それが今のソフトバンクの会長の孫さんだった。当時、孫さんの会社はゲームソフト等のソフトの流通業務がやっと軌道に乗り始め、会社を九段に移したばかりの時だった。まだ梱包を解いていない段ボールの積み上げられたオフィスで彼から色々な話を聞いて、コンピュータの普及によって急速に社会が変わることを感じた。

 その後、孫さんはアスキーの西さんとパソコン業界を二分するリーダーとなったが、西さんがMSXやハードに拘ったのに対し、孫さんは何処までもソフトやパソコンが社会に与えるインパクトに絡むビジネスに拘った。その後、仕事上の用件でも何回か彼に会って話をしたが、そのスタンスはずっと変わらなかった。

コンピュータのテクノロジーに通信の要素が加わって、コンピュータが社会を変えるインパクトの本番はこれからやってくる。それが僕らの本当の幸せに結びつくか否かはまだ五分五分の世界だと思う。

 
昭和五十一年二月号(1976)

①Cover Story証言 不況から見た昭和史
~減速経済への転換期を迎えた今、昭和五十年の波乱の歴史と経験を背景に七氏が語る。長引く不況を乗り切るための貴重な教訓の数々~

▽金融恐慌の嵐の中で…高橋亀吉
▽日本産業の大実験場・満州…椎名悦三郎
▽占領下の経済外交…宮沢喜一
▽高度成長と日本人…下村治
▽農業の壁…池本喜三夫
▽「列島改造」下の企業精神…池田芳蔵
▽強気論と弱気論の系譜…吉野俊彦

②Main Article
~小説より面白い~

▽日本共産党の研究2…立花隆
-日本共産党は路線の面では戦前の脱党者と同じ道を歩み、組織の面では戦前の組織を踏襲している。これが党史が語られない理由だ
▽新春座談会 皇族団欒…秩父宮勢津子、高松宮宜仁、高松宮喜久子、三笠宮寛仁(司会)加瀬英明
-戦後沈黙を守り続けていた高松宮が親戚の皇族にせがまれて披露する昔話、人生観の数々。これは正にロイヤル・ホームドラマだ
~戦争報道に真実はあるか~
▽ヘミングウェイはダメ記者だった
…P・ナイトレイ
-戦争報道は記者冥利。だが、そこに陥穽はないのか。真珠湾からベトナムまで、"世紀のスクープ"を追ってみると、意外な真実が…
▽三億円事件記者の哀しみ…内藤国夫
-大捜査は東京五輪、万博以来のお祭だった
▽山本七平の「最近新聞紙学」
~話題沸騰・デヴィ夫人自伝~

▽"世界でただ一人"のスカルノ…デヴィ・スカルノ
-大統領の太い肩の下の目が微笑しいた。温顔、それでいてあの磁力、十九歳だった私は、抗い難い力で、彼にひかれていった

③Others
~「現代の魔女狩り」論争~

▽鉄面皮な大企業擁護論…近藤忠孝、神崎敏雄
▽魔女狩り的思考の見本…グループ1984
▽トルコにひかれて大学教授…竹内和夫
-はるか西城の少数派言語は男のロマンだった
▽「死ぬ権利」ということ…守谷博
-植物人間として生かされる医療は辞退したい
▽四十男の子育て日記…(座談会)伊丹十三、池田健太郎、鎮目恭夫
-"子供は神の子"とはいうものの実際になってみればいやもう大変
▽ラブホテルの誓い…阿奈井文彦
-別府市で婦人服を作り大当たりした奇妙な人々
▽ポツダムの誓い…加瀬俊一
-ヒットラーは深く低頭し大統領の手を握った

④連載小説
▽「少年賛歌」…三浦哲郎
▽「青い壺」…有吉佐和子

⑤あの時の広告

NASAの技術の結晶という触れ込みで登場した最新テクノロジーの
時計はあっという間に陳腐化していってしまった


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コメント 8

Abraxas XIV.

これからは、電波時計でせうか?
by Abraxas XIV. (2006-03-01 01:36) 

Silvermac

タイムマシンで過去に帰ってみるのも面白いですね。私もテレビ付きのシャープのパソコンを買いましたが、扱えませんでした。テレビが付いていたので、「タダの箱」にならずに済みました。
by Silvermac (2006-03-01 08:18) 

「モノ」の変遷、面白いですね。
進化するモノにどこまでついていけるだろう…
30年経ってればもう別世界ですね。
でも1976年からの30年と、今からの30年は違うでしょうねぇ。
by (2006-03-01 13:48) 

くみみん

うちのPC1号はNECのPC6001でしたよ。その後、アマチュア無線
のお仲間とパケット通信やっていましたけど、そのころはPCや携帯で
こんなに簡単にメールなんかできるとは夢にも思いませんでしたね。
やっと、漢字Talkでしたっけ?感じがPCで打てたのに感動なんてして
いましたから。昔からの雑誌がなくなっていますが、文春さんがんば
っていますね!
by くみみん (2006-03-01 13:51) 

山猫庵

私はパナファコムのLkit16にすごく惹かれましたっけ。
後は中学の先生がわざわざ私物のMZ-80を
学校に持ってきてくれて触らせてくれたなぁ(^^)
by 山猫庵 (2006-03-01 14:50) 

としぽ

TK-80買いたくても買えなかったです。MSXで色々と遊びました。
デジタル腕時計の広告も久しぶりに見た気がしますね。
懐かしい物ばかり載っていますね。
by としぽ (2006-03-01 19:13) 

HummingBird

ティファニーとのコラボレションモデルが欲しかったんですよ、パルサー。
by HummingBird (2006-03-02 01:47) 

みつなり

うわあ、どれもこれも懐かしい!
by みつなり (2006-03-03 10:28) 

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