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大相撲観戦 [にほんご]

大相撲観戦

 この間の日曜日に両国の国技館に大相撲トーナメントを見に行った。今年が三十回目に当たるらしいが、本場所の間に一日だけで決着をつけるトーナメント戦が行われた。日本語学校が手配してくれた切符で留学生たちと観戦したのだが複雑な思いだった。

 
gillman

 国技館が蔵前にある頃は何度かいったことがあるのだが、今の国技館になってからは初めてだった。中に入ると思ったよりずっと広大な空間が広がっていたので驚いた。(実は僕はこの国技館の隣にある両国中学を卒業したのだが、卒業以来40年以上その校門の前に立ったことがないのでちょっと覗いてみようと思ったら工事中で入れず残念だった)

▽トーナメント戦
 トーナメントは昼過ぎの早い時間から始まる「十両トーナメント戦」と午後3時ごろから始まる「幕内トーナメント戦」とに分かれている。もちろん大抵の人は幕内戦が目当てなので満員になるのは三時過ぎくらいからだ。

 幕内戦はシード制の6回戦トーナメント方式になっている。幕内の力士の全てが参加するわけではないが横綱をはじめ主だった力士はたいてい出ている。二回戦は中入りをはさんで16番行われたが、日本人の力士はばたばたと負けていった。負け方もあっさりとしている。四回戦に進んだのは…

朝青龍…モンゴル、朝赤龍…モンゴル、黒海…ロシア、琴欧州…ブルガリア、安馬…モンゴル
白鵬…ロシア、旭天鵬…モンゴル、栃東…日本

 というわけで、日本人力士は栃東だけという具合。四回戦で栃東が負けたのであとは外人力士同士の戦いだ。栃東の玉の井部屋は僕の自宅のすぐ近くなので決勝までは残ってほしかったのだが…。優勝は当然、朝青龍だ。本場所を控えて怪我をするのが嫌だからみな本気は出さない、という人もいるし確かにそういった面もあるかもしれないがそれは外人力士も同じことじゃないか。

 一緒に観戦していたのは、アジア系のロシア人の留学生だったので目を輝かせて勝負の行方を見ていた。彼はバイカル湖の近くの共和国出身でモンゴル語も話せるからいずれにしても応援のし甲斐があったと思う。彼の話では、彼のモンゴル人の友達などは場所毎の番付の異動から、取り組みごとの決まり手まで詳しく知っているという。僕の座ったブロックには外人客が多かったのでロシア語や韓国語の応援が飛び交っていた。見方によっては外国人力士が日本の伝統競技を守ってくれているとも言えるのかもしれない。

▽武士道としての相撲
 僕は相撲評論家の竜虎の解説が好きだ。彼は勝負の勝ち負けではなく、「勝ち方」「負け方」にこだわる。だから勝った勝負でも彼に非難される場合もあれば、負けて賞賛されることもある。彼の解説の基本には常に「武士道としての相撲」という視点があり、それに照らし合わせてどうかという評価なのでブレることが少ない。ただ勝てば良いという考え方はない。

 相撲のルールは簡単に見える。基本は相手より早く土俵を割ったり、体の一部が土俵についたほうが負けだ。しかしそれにはいくつか例外があって、たとえば「かばい手」の場合は相手よりも先に土俵に手をついても負けにはならない。相手が「死に体」、つまりどうやっても回復できないような体制にあるときこれ以上被せると相手に怪我をさせると思われるような場合は、それを避けるために先に手をついても負けにはならない。それは勝負の決まったものをそれ以上痛めつけないという武士の情けなのだ。負けた相手の手を引いて起こすのもそうだ。間違ってもガッツポーズなんかは許されない。

 国際化、イコール、相撲の近代スポーツ化という道を辿ってはほしくないと思う。朝青龍の土俵入りは堂々として素晴らしかった。横綱の風格もついてきた。しかし時間一杯になって気合を入れるために左手を上げる仕草などはモンゴル的な感じがした。それはそれで良いが横綱の精神が彼に伝わっていてほしいと思う。トーナメントの間に「相撲教室」と称して、土俵上で大銀杏の髷を結う実演と、横綱を締める作業が再現された。それぞれ琴欧州と朝青龍が土俵に上がって実演をして見せた。それをみのもんたが司会進行するのだが、それはそれで楽しくていいのだが、同時に相撲文化の考え方についても竜虎のような本当に相撲を理解する人間に解説して欲しかったと思う。

                   
*以前、大学で英語の講師をしているイギリス人のJ先生と飲んだ時に相撲の話になりました。辞書を引くと横綱は英語でGrand Chanpionと出ています。彼はその言葉を西欧的な概念で考えていたので少し違うという話をしました。一番強ければそれで良いじゃないかというのではなく、心・技・体の充実だとか、勝つときも横綱らしく勝つことが必要だとか、ずっと負け続けたら自ら引退することが必要なのだ等々話したが中々分かりづらいらしいのです。例えば、負け続けてもいつまでも引退しなかったらどうなるのだ、というので、横綱は「名を惜しむ」からそんなことはない、と言ったら、イギリス人にも騎士道的な発想があるのでなんとなくわかったらしいですが、文化について話をするというのは難しいですね。相撲の世界や日本人の古典的な心情は同じ視線を持つ人間にはわかり易いんですが、そうでない場合にはかなり深い説明が必要だなぁと痛感しました。結局、相撲について英語でレポートを書けという宿題を貰ってしまいました。

*横綱審議会は日本相撲協会から横綱推薦の諮問があった時に答申する機関で、通称「横審」と呼ばれています。横綱の成績、態度に対し、注意、激励、引退勧告もしますが、拘束力はなく進言にとどまります

  朝青龍の土俵入り                 琴欧州の大銀杏結い

*「留学生のためのちょっと解説」

Understanding Sumo

The most important thing for yokozuna
is not only to win, but to win rightly.

The Sumo Ranks are divided into 10 groups. Makuuchi (also called Makunouchi) is the top division of sumou ranks, consisting of yokozuna, ozeki, sekiwake, komusubi and maegashira. The rikishi (sumo wrestlers) are divided into east and west team. The east team (called Higashi) traditionally considered more prestigious than the west.

Sumo ranking will be released in Banzuke (list of rikishi, according to their ranks). These official ranking list will be published before each of the tournaments. Tournaments called Basho (or Honbasho) will be held six times a year.The names of Makuuti rikisi will be written on top of Banzuke in large, bold characters.

Yokozuna is sumo's highest rank, created in early Edo era. Yokozuna are often called in English as "Grand Champion", but the position of yokozuna is quite different from other sumo dividions. If other division's rikishi make a poor record during Basho (tournament), he will be demoted. On the other hand, only yokozuna can never be demoted, even if he makes poor score during Basho. If yokozuna should continue with a bad record, he is expected to retire. But none can force him to retire. It is his own decision.

Yokozuna Shingi-iinkai (the Yokozuna Deliberation Council) of Sumo Kyokai (Japan Sumo Association) decides the proposed promotion of a paticular rikishi to Yokozuna. To become a cadidate of yokozuna, he must have won two consecutively Basho while holding the rank of ozeki.

There are three important points to becoming yokozuna. He must excell other rikishi in these three points. These three are 心 (shin), 技 (gi) and 体(tai). 心 (shin) = こころ…whether he is a man of character, worthy to hold the title yokozuna. He must have real manly dignity of Bushi. (the word "rikishi" means powerful Bushi) 技 (gi) = わざ…whether he has better sumo techniques than other rikishi.  体 (tai) = からだ…whether his physical strength is enough to hold the position. The most important thing for yokozuna is not only to win, but to win rightly. This is why yokozuna is sometimes called God of Sumo.
                                                                                                                                                 by gillman 


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マイケル

大相撲は見に行ったことがありません。大相撲の世界は、早くも外国人に開放していますね。あらゆる世界で国際化の波が押し寄せている分けですね。
by マイケル (2006-02-07 08:37) 

山猫庵

残念ながらまだ一度も大相撲を生で観戦した事がありません。
「かばい手」は言葉だけは聞いた事がありましたが
初めて意味を知りました。

勝った力士が手を差し出して引き起こそうとするのを
振り払う様なシーンを見かけた事もありますが
あまりキブンのいいモノではなかったですね…
by 山猫庵 (2006-02-07 12:45) 

HummingBird

相撲かぁ・・・・。
残念ながら良く分かりません(涙)。

>間違ってもガッツポーズなんかは許されない。
でもこのくだりは妙に納得しました。
by HummingBird (2006-02-08 17:33) 

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