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病院の身売り [新隠居主義]

病院の身売り


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 縁あってもう三十年近くお世話になっている病院がある。その病院でもう三回手術を受けたこともあるし、現役時代の最後の方は過労で頸椎症が悪化するので毎年のように年に一度は一月近く入院していたこともある病院だ。その病院が十月に突然他の病院グループに身売りすることが決まった。

 ぼくが通っていたその病院は企業名を冠した大病院でそのもとの企業の再建のためという事らしい。日本でも有数の大手メーカーで経営の失敗から急速に会社がおかしくなってしまった。昔ぼくも一年ほどその本社で仕事していたこともあって親近感のある企業だったが…。数年前に医療事業部門も手放し、従って病院も用無しになったのか残念なことではある。

 …というと他人事みたいだが、ぼくにとってはそれが切実な問題になってしまった。この歳になって医療難民のようになろうとは思ってもいなかった。現在ぼくが通院しているのはその病院だけなのだけれど、大きい病院なのでそこで複数の診療科にかかっており、いずれも長期間の通院が必要となっているのだが、病状が安定しているという理由で来年の一月一杯で他の病院に転院するように言われてしまった。嗅覚もゼロだし、いまだ胸のつかえの原因も結局分からずじまいなのに。転院先は自分でネットで探してくれと。

 発端は消化器科の医師に自分は三月で辞めるので、あとはぼくが今かかっている内分泌内科の医師に引きついでおくからとのことだったが、翌週その内分泌内科の医師の診察の際に、今度はこの病院が売却されるので内科ではこのままだと内科医が不足しており、買収後は病院の性格も変わるようなので他の病院へ行くように言われてしまった。ここに長年通っておりこの病院に自分の膨大な医療データがあること、何度もこの病院の治験にも協力してきたこと等も伝えたのだけれども、その医師も今後のことは自分でも責任が持てないから変わった方が良いと言われた。

 翌週、昨年手術をしてもらった別の科の医師の診察のときにも、その医師も三月で辞めるので紹介状を書くから他の病院に行くようにと…。さらにもし何かこの病院の他の医師の動向等の情報が分かったら教えてほしいとも言われた。どうやら医師の間にも詳しい情報は伝えられていないようだ。そんな医師の不安感はダイレクトに患者にも伝わってくる。この病院にはずっと感謝もし、信頼もしていたのだけれども、ぼくにとってあまりにもあっけない幕切れとなった。

 この病院には個人的にもいろいろな思い入れがあり、ぼくの人生の大きな山場を何回かこの病院のベッドの上で迎えた。このブログでも何度かそのことにも触れてきた。せめてもの救いは内科の医師が、来年一月に自分の最後の内視鏡チェックを責任を持ってやると言ってくれたこと位いか。買収後の病院は収益の見込める長期リハビリ分野に的を絞ることになるらしい。この年の瀬に世知辛い状況になってしまった。


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[Blog Review その時ぼくはこの病院にいた…]

病棟の夜  (2016)
眠り Der Schlaf  (2016)
香り無き世界 (2016)
病院の朝  (2011)
エレベーター  (2009)
病院閑話  (2009)
Blackout  (2009)
病院の桜  (2006)
レクイエムを残して  (2005)



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コメント 2

としぽ

おはようございます。
病院の身売りは今までの治療を考えると大変ですね。
病院内部ではドラマのようなことになっているようですね。
by としぽ (2017-12-19 10:58) 

coco030705

こんばんは。
長年通っていた病院が身売りとは、思いもかけないことが起こるものですね。患者さんは大変ですよね。でも東京はたくさん病院があるので、早くいい病院が見つかることをお祈りいたします。

by coco030705 (2017-12-20 23:46) 

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