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ガラス窓の向こう [新隠居主義]

ガラス窓の向こう

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 窓の外の日差しは梅雨が明けたことを誇示するような強烈さで地面を照らしている。その光は居間の窓辺にある観葉植物の葉を貫いて緑色の光を投げかけている。ガラス窓の向こうはまぎれもなく眩しい夏の季節になっている。ぼあさんが転倒して入院してから早、一月半近く経った。今は当初入院していた総合病院からリハビリテーション専門の病院に移ってリハビリを行っている。転院した当初、担当の医師からは以前のような生活は難しいと思うと言われた。自宅に帰っても車椅子で生活することになる可能性が高いとも言われた。もちろんそれはばあさんのリハビリの進展いかんなのだろうけど、八十九というばあさんの歳を考えると、今から覚悟しておかなければならないようだ。

 このリハビリ病院の医師は少なくとも病気だけではなく患者も診ていると思えた。数年前にぼく自身が長期に入院した時のことも含めて、もう随分長いこと現代の医師たちに対する疑問の念が頭から離れない。それは医師が病気だけを診て、患者を診ていないという疑念だ。医療が専門化してその技術が格段に進歩したことは否定できないが、一方医師の方も専門化してしまっており、人間としての患者全体を診る医師がいなくなってしまったような気がする。日本は家庭医の制度をとっていないのでかかりつけの町医がそれにあたるのだが、検査と投薬ばかりで地域の他の医師や医療機関との連携はまだお粗末な感じがする。

 ぼくはばあさんを医者に連れてゆく時、必ず今かかっている他の医療機関の名前と薬のデータを告げている。医師の間で、投薬や治療方針に意見の食い違いがある時にはどうしたらよいか医師間で調整してほしいと依頼したが、それはあくまで自分の意見なので言うことはできないと言われたこともある。それに訴える症状が自分の専門領域でないとわかるとその患者に対する興味を急速に失って、「それなら、○○科にいったらどうですか」と言われたことも一度ではない。

 最初に入った病院では後期高齢者のリハビリに対しては今はとても厳しくなってその病院ではできない、ついては専門の病院に移るように言われた。今の病院に空きができて転院できるまでの10日間ほど、同室の他の患者はリハビリ室に行ってリハビリを行っていたのに、ぼあさんは看護師さんたちが時間の合間にやってくれる車いすの訓練位であとはベッドに寝たままの日々がつづいた。ばあさんのお陰で、日の光に葉を照らして葉脈が透けて見えてくるように、高齢化社会を取り巻くいろいろなことが透けて見えてくる。しかし、その向こうに広がっているのはどうやら眩しい季節ではないようだ。

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 *今、車いすの生活を前提としてどうやって家の中でやってゆくか、いろいろと考えて準備をしています。大学の夏休みの間に壁の塗り替えや部屋のレイアウトの変更など考えうるだけのことはやろうと思っていますが、結構こちらの身体もしんどくなってきます。気がつけば我が家も老々介護の域に入っているようです。


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コメント 8

SilverMac

「病は診ても、患者は診ない」、確かにそういう医師も増えています。後期高齢者の一人として、この国の将来に暗澹たる思いがしてなりません。
by SilverMac (2008-07-22 08:54) 

ナツパパ

わたしの父も85歳になりました。
幸い元気で暮らしているのですが、gillmanさんのお話も人ごととは思えません。
この国の行く末が心配でたまらなくなりますね。
お母様のご病気がよくなりますように、と願って、niceを押します。
by ナツパパ (2008-07-22 09:09) 

kumimin

こんにちは。
「病気」自体が治ってもその後の生活の方が不安ですよね。それを補って行くリハビリではないのか?って思いますけどいまやその道も断たれつつあります。
介護の現場も当初は介護状態にならないようにすることと、なるべく居宅で介護がしやすいように!をテーマにされてきたのに方向はとんでもなくずれてきて、今後介護状態の軽い方は自己負担が増える可能性も出ていますね。介護の現場、制度を決めていらっしゃる方々はどれだけ理解されているのかなあ?
by kumimin (2008-07-22 11:02) 

aya

採用試験で不正があったように、お医者様も、人としての
資質に??の方もいるようです。 天職と熱い思いの医者も居ますが
世の中心配なことばかりです(;O;)
by aya (2008-07-22 21:39) 

親知らず

おっしゃる事を良く反芻して、明日からまた臨みたいと思います。
by 親知らず (2008-07-22 23:24) 

リフソロ

ガラスも向こう側も不透明で、よく見えていません。
by リフソロ (2008-07-23 07:58) 

としぽ

こんばんは。私の母も85歳で腰が曲がって家の中ではっています。
怪我は心配です。人ごとではないと思っています。
by としぽ (2008-07-23 23:43) 

coco030705

暑中お見舞い申し上げます。

お母様大変ですね。でも、リハビリの専門病院がいい所のようですね。
よかったです。
今は病院も細分化されすぎて、同じ内科でも一日で終わらなかったりしますね。何とかならないかと思います。
私たちもいずれは後期高齢者になるのですから、自分達の問題として、真剣に考えていかなければなりませんね。



by coco030705 (2008-07-24 18:37) 

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