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昭和五十年七月号 文芸春秋 [あの時の文春]

 
30年の時を越えて… あの時の文春 

 我が家には30年分の「文芸春秋」がおいてある。置き場所に困り邪魔で仕方ないのだが、捨てるに捨てられない。というのも毎月、昔の古い文芸春秋を読むのが習慣になっているからだ。もう少し詳しく話すと、毎月30年前の当月号の文芸春秋を取り出して来て読むわけだ。今であれば昭和五十年の七月号を今月発売されたばかりの雑誌のような感じで読む。これからあと30年くらいは30年前の文芸春秋を毎月読むことが出来るわけだ。


30年という時間は「歴史」というには短かすぎるし、「この頃」というには昔すぎる微妙な期間だ。しかし人の一生で言えば、二十歳の若者が五十歳の壮年になる長い期間とも言える。文芸春秋はいわゆる月刊雑誌だが、メディアとしての雑誌というものは「その時の出来事」を「その時代の目」で切り取っているので、いわゆる書物よりもその時代を如実に映している。30年間というフィルターを通すと、その時だけの浅い嘘はすぐにばれることがあるし、日々動いてゆく時代の中で何が変わらないかも垣間見えることがある。

雑誌の良い点にもうひとつ「広告」が多いことがある。目に見えるものの変化を通じて時代の陳腐化の速度が明確に見えてくる

30年前の今月号を見ることは、単に過去を振り返ることではなく、今を浮き彫りにすることだと思う。今の雑誌を30年後に読んだらどうだろうか、その距離感を過去に向けただけである。というわけで、「あの時の文春」を今後続けてゆきたい。


昭和五十年七月号(1975)
まあ、30年物のウィスキーだと思ってください。スコッチのシングル・モルトだったら30年物は結構しますよね。それは貴重な「時の味」がしますから。


①Cover Story
▽日本医師会の金力と権力…屋山太郎
-医師のモラルが問われ、医療の荒廃が叫ばれるいま、日本医師会の実力の秘密をえぐる
-乱診乱療、医療費の水増し請求、脱税と良心的な医者がバカをみるような行為をよく耳にする。「医者は儲かる」というのが庶民の実感だろう。加えて、医師会の強引な戦術は年中行事と化した。しかし、たかだか九万人の医師会が、なぜ強いのか? 医師の優遇税制が社会的不公正の見本として問われるいまこそ、実力集団・日本医師会の徹底的研究が必要だ。
*武見会長は政界への強い力を発揮し医師優遇税制を堅持した

②Main Articles
~ベトナム以後の日本~
▽楽園は終わった…生存のための研究会

-世界の潮流が変わる今、米の「核の傘」を無条件に信じて良いのか
-インドシナの激変以後、世界の潮流は変わろうとしている。日本の安全もそれと無縁ではない。果たして今後とも、アメリカは極東を守り続けるのか。その「核の傘」を一つのよるべとして経済大国への道を着々と歩んできた我が国にとって、決断の時が来たようだ。空疎な平和論議は無力だ。「国の安全とは何か?」の冷徹な国民的コンセンサスの形成が要求される時代なのだ。
▽サイゴン特派員は何を報道したか…徳岡孝夫
-なぜ日本人記者だけが異様に孤立していたか
~日本語と日本人~
▽日本語についての九つの常識…大野晋ほか
*現在は日本語ブームだといわれているが、この時も日本語ブームだった。原因は二つ考えられ、一つは石油危機以来日本人が感じてきた不安である。民族のアイデンティティの失われることへの危機感とその克服努力が要因となっている。もう一つには逆に日本的経営の成功への自信が日本語への自信を取り戻させた、と分析している。
▽方言なしに笑いは書けない…田辺聖子・井上ひさし
▽自前の英語・自前の日本語…小田実
~特別手記~
▽中国・1975年春…曾野綾子


③Others
▽義務教育を廃止せよ…渡辺昇一
▽つくられた「川崎直下型地震」…柳田邦男
▽ワイマール国家の墓標…加瀬俊一
▽流行作家香港に死す…村島健一
▽わが名は国際会議屋…近浪廣
▽わが青春の渡辺一夫…中村光夫ほか
▽囲碁版・朝日読売大戦争…三好徹
▽ロンドン発「丸山ワクチン送レ」…丸山千里
▽ただいま文盲休業中…結城昌治
▽告白的別居結婚のすすめ…南博
▽腹腹時計を追跡して…福井惇
▽人種の名において…マール・イレル


④Ansicht (view)
*昭和五十年の七月といえば、その年の四月についに南ベトナムのサイゴンが陥落し南ベトナム政府は無条件降伏をした。サイゴン最後の日に向けて米軍は撤退、アメリカ軍属の脱出、そして残された南ベトナム政府関係の難民、各国の特派員が脱出経路を求めて混乱を極めた。アメリカの敗戦そしてベトナムの放棄は日本にとって大きなショックであった。有事の際にアメリカは本当に日本を守ってくれるのか。日本に初めて深刻な不安感が持ち上がった。

*は筆者のコメント、他は文芸春秋の見出しの原文ママ


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ナツパパ

昭和50年の夏、わたしは20歳で大学2年生でした。
ちょうどgillmanさんがお書きになっているのと同じ年回りになりますね。
ベトナム戦争については、友人たちとずいぶん話し合った記憶があります。
あのとき、相当過激な反米論者だった友人は、今、イラク戦争をどう思っているのでしょう。聞いてみたくなりました。
自分でも、昔を振り返ることの出来る何かを探してみたくなりました。
by ナツパパ (2005-07-10 09:54) 

gillman

そうですか、僕は人よりちょっと遅れて会社に入って一年目でした。6月に結婚したばかりでした。今考えると会社でも生意気だったなぁと思います。そんな奴を当時の上司はよく面倒見てくれたなと感謝しています。
by gillman (2005-07-10 17:41) 

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