SSブログ

猫を巡るアフォリズム Aphorisms on Cats ~その12~ [猫と暮らせば]

猫を巡るアフォリズム Aphorisms on Cats ~その12~

DSC03607rs.JPG

 
 神のあらゆる創造物の中で、たった一つ縛り付けて奴隷にできない者がいる。それは猫だ。もし人間が猫と交配できたなら、人間は進歩するだろうが、猫は退廃してしまうだろう。
 
(マーク・トゥエイン)
 Of all God's creatures there is only one that cannot be made the slave of the leash. That one is the cat. If man could be crossed with the cat it would improve man, but it would deteriorate the cat. (Mark Twain)

 

 ■… 猫は本当に飼いならされた動物だろうか。もしかしたら、フランスの社会学者マルセル・モースの言うように、猫の方が人間を飼いならしているのではないだろうか。猫と暮らし始めれば、小さな友達にこっちの要求や権利を押し付けるより、猫のそれに従う方がいかにたやすいか、早々と覚えてしまう。

 例えばある時、家で、猫を抱き上げてかわいがろうとする。もし猫の方にもその気があれば、愛情のやり取りもうまくいき、猫は筋肉をゆるめてゴロゴロいいながら、目を細めて愛撫に身をまかせる。

 けれどももし機嫌が悪くて、おべっかなんかやめてくれという気分だったら、身体をこわばらせてもがき、抱き上げたりすれば足を突っ張っていやがり、こっちが離すまで、控えめだが断固として抵抗し、あげくにさっさと逃げ出してしまう! 猫のしてほしいことも気まぐれも、一緒に暮らすうちに、こうしてだんだん一種の命令みたいになってゆく。…

  (ジョルジョ・チェッリ「猫暮らしLa Vita Segreta dei Gatti・マホメットの猫」より)


 家の中で日向に寝ている猫をみると、ぼくは少しホッとする。自由気ままで陽の光に全身を晒してる姿は見ている方まで気持ち良くさせる。自分なりに猫達を大事に飼っているつもりだけど、心のどこかで本来自由に好きなところを駆け回れる猫を縛り付けているという後ろめたさのようなものがあるのかもしれない。

 今は猫達を家の中で飼っている。もしぼくが野中の一軒家や閑静な田舎に住んでいたなら外扉のどこかに猫ドアでも作って好きに出入りできるようにできるのだけれど、街なかでは車による交通事故や他の猫からの感染症など命に係わるいろいろな心配があってそうすることもできない。それに世の中には猫好きばかりが居るわけではない、どこかで捕まって虐待を受けないとも限らない。外猫と家猫の平均寿命を比べてみるとその差が如実に出ているのも事実だ。

 もちろん、人間もそうだけれど必ずしも長生きするだけが幸せとは言えないけれど、猫がネズミ捕り期待の生き物から家族的な位置づけに変わったことによって、なんとかその生存のリスクを減らして長生きさせたいと思うようになるのも自然なことではないか。

 ぼくの子供の頃に飼っていた猫はご飯や縁側での昼寝の時はウチにいたけれど、それ以外は大抵は庭や工場の片隅でネズミを狙っていた。夜も猫が家に帰ってきているかどうかなんて確認しないで戸締りをして寝ていた。そう思ってみると日本の家屋の在り方の変化が猫の飼い方の変化にもつながっているのかもしれない。

 昔の日本の家屋は外に向かって開かれていた。庭に面していつでも開け放たれていた縁側。部屋の仕切りだって今のようにドアではなく障子や襖だったから、ウチの猫も器用に手で開けて出入りしていた。昼間は玄関の鍵もかけないことが多かったし、あらゆる面で家は外の世界とつながっていた。ところが今は縁側は無いし、エアコンや暖房器のためもあって大抵は締め切っていることが多い。猫だってそう気軽に出入りできないのだ。時代が猫の飼い方を変えた。

 それでは猫の方は変わったかというと、どうもそうではないらしい。猫たちの目には今でもウチの中は遊び回れる草原のように見えているだろうし、その中で居心地の良い場所を探す能力も失われてはいない。そればかりか野原を駆け回っている頃よりも関係を深めることになった人間と言う召使が傍に居るおかげで便利なことが多くなった。この人間と言うやつは、これがまた、気の向いたときに少し甘えてやれば何でも言うことを聞く単純な生き物なんだ…と。


 

DSC03608rs.JPG


catblack.gif

nice!(42)  コメント(9) 
共通テーマ:アート

nice! 42

コメント 9

engrid

召使、そうかもしれないと思う時があります
ねこに、眼で懇願されて、ハイハイと要求をかなえていますから
うちは、出入り自由な環境で飼っていますから
夜の近所の見回り、縄張りの偵察は、日課のようです
by engrid (2014-01-20 17:43) 

Silvermac

犬とは徹底的に違いますね。
by Silvermac (2014-01-20 18:32) 

coco030705

こんばんは。
子供のころ実家ではいつも猫と犬を飼っていましたが、どちらも放し飼いでした。だから猫たちも自由に出入りしてましたね。そうそう、障子を手で開けてよく入ってきてました。それに庭でトカゲや雀なんかを捕って見せに来ていました。トカゲが死んだふりをしていたのが生き返って、チョロチョロしてキャーって逃げ回ったりして……。人間のことを仲間って思ってたのかしら。
それにしても、猫が何をしても怒れないですね。ただ食卓だけは上がらないようにしつけました。本当に賢くて不思議な生き物ですよね、猫は。
by coco030705 (2014-01-20 21:10) 

たま

ほんと、猫ってそうですよね。
うちのたまも生まれかずうと家の中。土を踏んだこともないかも。
自由に駆け回っている田舎の飼い猫を見ると、たまがかわいそうに
思うことがあります。
by たま (2014-01-21 20:41) 

ニッキー

五歩Mon&niceありがとうございます^^
私は完璧ににゃんこに下僕と思われてます^^;
お腹が空いた時は甘えてきますが、それ以外の時は『寄るな!触るな!』と言われちゃいます(T_T)
我が家にはゴッドマザー(かみさん)がいるので余計に私の立場は遙か下になっちゃってます(-_-)
それでもにゃんこ大好きでにゃんことの暮らしはとても楽しいと思える私は立派な猫バカ・親バカです^^;
by ニッキー (2014-01-22 15:22) 

ゆきち

ご来訪&niceをありがとうございます♪
”少し甘えられたら何でもいう事をきいてしまう”、まさにその通り、猫に操られる日々を心から楽しんでおります^^;


by ゆきち (2014-01-22 22:03) 

blanc

わがまま気まぐれ甘えん坊
猫だと全て許してしまいます。
こんなに愛らしく美しい生き物を作った自然界ってすごいですね。
(かなりの猫バカですみません)
by blanc (2014-01-24 23:04) 

のらん

神様は、猫に「わがまま」っていう特権を与えたのですね、きっと(^_-)-☆
by のらん (2014-01-25 16:37) 

親知らず

喜んで召使いになります。
by 親知らず (2014-01-29 00:22) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント