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Colours of New Year [新隠居主義]

Colours of New Year

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 正月の二日か三日には歩いて行けるので大抵は近くの西新井大師に初もうでに行く。小一時間もあれば行って来られるので、ぼあさんが居間のリクライニングで居眠りをしているのを見計らって二人で行くようにしている。後日カミさんは松の取れない内に毎年義姉と浅草の浅草寺に初もうでに行くのが習わしみたいになっている。

 正月のお寺や神社はとてもカラフルだ。西新井大師でも寺の本堂の入り口に大きな五色幕がたなびいていた。その五色幕の緑・赤・黄・白・青に加えて、露店のダルマの鮮やかな赤と白、カラフルな大熊手、焼きそばなどの露店の派手な横断幕、そして店先に並ぶ数々の色鮮やかな商品。境内は普段とは打って変わった原色の洪水だ。特に鮮やかな赤が目にもまぶしい。

 初もうでの人の数も並大抵ではない。人の波に押されるように少しずつ前に進まなければならない。小型のNEX-7に小さめのレンズを付けて持ってきたのだけれど、それでもレンズフードがちょっと邪魔な感じがする。境内の狭い道の両側にはびっしりと露店が並んでいる。露店の原色に挟まれた路を人ごみに揉まれながら歩いているうちに、これはAgfaで撮りたいなぁ、とふと思った。

 三十数年の長いインターバルの後にカメラの趣味を再開してから、今はもう全てデジタルカメラなので手元にフィルムはない。それに銀塩フィルムのメーカーや番手のバリエーションもどんどん減っているのが現実だ。数々の名品と言われたフィルムの番手が次々と生産中止になってゆく。プロや銀塩写真にこだわる人の中には大量に買い込んでいる人たちもいると聞いているけれども、フィルム自体の耐用年数を考えたらそれもいつまで続くのだろうかと心配になってしまうのだ。

 数々の名品と言われたフィルムが姿を消すということは、単に物理的にモノとしてのフィルムが姿を消すことを意味しない。名品と言われたフィルムは、恐らくはそれぞれが独特の色合いなどのスタイル、大げさに言えば世界観のようなものを持っていたように思う。かって言語学者のソシュールはモノがあるから名前が付くのではなくて、厳密に言えば名前が存在することによって初めてそのモノの存在が浮かび上がってくるのだと言ったけれど、それはフィルムと云うモノにも当てはまるかもしれない。

 例えばKodak EktachromXXXというモノとしてのフィルムが世間からなくなると当然その名前も通常では使われなくなってしまう。それはそのフィルムが持っていた世界観のようなものも現実の中では存在しなくなってしまうことを意味している。もちろん写真博物館のようなところへいけば作品としては目にすることはできるけれども、それは活きたものではもはやないのかもしれない。逆にその名前が何らかの形で使える状態で生き残れば、そのスタイルや世界観も存在し続けることができるかもしれない。

 ここのところぼくが時々使っているデジタルでのフィルム・シュミーレーターはあくまでも疑似だけれども消えてゆく名品フィルムのスタイルをシュミレートすることができる。それは各フィルムが持っていた彩度や明度などの色合いや粒状感などを子細に分析してデジタルの原データに反映しようとするものだ。同じようなことはLightRoomなどのソフトで細かくセットすることによっても可能だけれど、ぼくのような素人にとってはフィルムの品番を選ぶだけでシュミレートできるのは有難い。

 最近では一定のスタイルをレタッチするアプリも数多く出ているけれど大抵は、トイカメラ風とかポラロイド風とか、Instagram調などの大雑把なものがほとんどで、一つ一つの現実のフィルムのスペックを詳細に分析して再現しようとするものはあまりないと思う。あくまでも疑似の世界で、銀塩フィルム党の人からはまやかしと非難を受けるかもしれないけれど、今現実として次々と名品フィルムが姿を消してゆく現在ではこういう取り組みでまず使える形でその「名前」を残すということも無駄ではないと思うのだが…

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 (cam:NEX-7 ret. Kodak Ektachrome 100VS by DxO-Filmpack3)


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DSC03434.JPG DSC03434DxOFP_AgfaPrecisa100.JPG DSC03434DxOFP_FujiProvia100F.JPG DSC03434DxOFP_KodakEctachrome100vs.JPG

*上はDxO Filmpack3によるフィルム別シュミレーションを正月に撮った画像で比べてみたものです。左端がNEX-7でのJPGそのままの画像です。(ただしサイズは30%に縮小してあります)左に向かって次がAgfa Precisa100そしてその左がFuji Provia100F、続いてKodak Ectachrome 100vsです。いずれもポジフィルム系のISO100仕様のフィルムで試してみました。

**一見すると分かりにくいですが、ピカチューの黄色やその左のお面の赤やその下のピンクの色加減など、彩度や色の深さが微妙に異なって、かつそのフィルムの特質みたいなものもそれなりに感じられるようです。モノクロ版ではTri-XなどのISO値の高いものではその粒状感もかなり再現されるようです。もちろん疑似という範囲でですけれども。

***上の例のように各家庭でのキャリブレーションがまちまちのモニターで見ることが前提のネット画像の場合は、実際にはそこまで細かく設定してもあまり実質的な効果は少ないと思いますが、紙焼きにすると結構な違いが出るようです。

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lepin

あけましておめでとうございます。
訪問&コメントありがとうございます。

私はフィルムは年に1~2回撮っているのが現状です。
全く詳しくはないですが。
by lepin (2013-01-05 16:51) 

green_blue_sky

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
by green_blue_sky (2013-01-05 17:41) 

drumusuko

明けましておめでとうございます。
今年も、宜しくお願い致します。
by drumusuko (2013-01-05 17:42) 

katakiyo

私の友人もフィルムで悩んでいます。
by katakiyo (2013-01-05 17:55) 

SILENT

明けましておめでとうございます
憧れのフィルムはコダクロームASA25と、トライXでした。国産フィルムより高かったのと、何本も撮らずに、デジタルカメラの時代になりました。フィルム別再現ソフト興味はありますね。そのモノから見た世界観心惹かれます。
by SILENT (2013-01-05 22:32) 

coco030705

こんばんは。
なるほど一番下の4枚を比べてみると、色の違いがよくわかりますね。
フィルムがなくなるのは何となくさびしい気がします。今は映画もデジタルの時代ですものね。昔の映画とはやっぱり色が違うように思います。

by coco030705 (2013-01-05 23:45) 

evergreen

思いがけず昨年からデジタルカメラを始まして、
fujiのフィルムシミュレーションのプロビアとかベルビアが懐かしくて、
X-E1を購入しようかと思っていたのですが、
プリセットされているソフトがあると良いですね。

by evergreen (2013-01-06 15:35) 

aya

おめでとうございます♪
フィルムを体験してみたいと思いつつ、まだ出来ていません。
昔はオリンパスペンだったか、36枚撮りでハーフサイズ、72枚撮れる
カメラがありました。 今では死語の 〇カチョ〇カメラとか言ってましたが、
それくらいですね。
今年はまやかしと言われる(笑) 小手先のカメラでやってみます!
今年もよろしくお願いします(^-^)V
by aya (2013-01-06 15:49) 

お茶屋

いつもたのしみに拝見させて頂いております♪
今年もよろしくお願いします!
by お茶屋 (2013-01-06 18:35) 

ナツパパ

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
この、gillmanさんの記事を拝見して、わたし、ソフト買っちゃいました!!
ヨドバシにEssencialというバージョンが残っていましたよ。
無事インストールできて、過去の画像をあれこれしつつ、愉しんでいます。
簡単で便利、面白いですね。
素敵なソフト、ご紹介くださいまして、ありがとうございます。
by ナツパパ (2013-01-07 16:33) 

坊や

Kodak Ectachrome はマゼンタ強めで、Fuji Proviaはやや強く
彩度が高い。Agfa Precisaは本来の色彩に近くて好みです。
フィルム時代は撮る行為そのものが今より何倍もワクワク、していたような・・・
便利が過ぎるとー  見失い、忘れてしまうこともそれなりに。
by 坊や (2013-01-08 20:18) 

としぽ

遅くなりました、今年もよろしくお願いします。
フィルムが無くなるまでに撮りたいと思って、本数は少ないですが
去年からフィルム撮影を復活させています。昔のレンズで撮りたくなります。



by としぽ (2013-01-09 21:12) 

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