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ベートーベンの夜 [Music Scene]

ベートーベンの夜

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 久々のサントリーホール。この前来たのは何年か前の冬、ゲルギウスの指揮するマーラーを聴きに来てそれ以来だと思う。今日のコンサートは友人と何ヶ月も前からチケットを買って楽しみにしていた。ヘルベルト・ブロムシュテットバンベルク交響楽団を率いて行う日本公演の皮きりの日だ。不謹慎な話かもしれないけれど、ブロムシュテットは今年で85歳になるから、彼の演奏をこれからも日本でもずっと聴けるという確証はない。ぼくにとってはチケットは決して安い額ではなかったけれど、それでも聴きたかった。

 でも直近になって今回のコンサートはあきらめなければならない雰囲気になってきた。コンサートの前日、四泊の予定でショートステイに行ってその日の夕方に帰ってくるはずだったばあさんが、朝一番ショートステイ先から電話があって背中と頸が痛むので医者に行きたいからすぐ帰ると言っているがいかがしましょうかと問い合わせがあった。

 ばあさんは辛がっているのだから、それでも予定通りにしてくれとは言えないので了承した。ばあさんが送られて来た車いすでそのままかかりつけの医者の所まで連れて行って診てもらった。特に異常は無かったが、背骨のところが痛いと言うので午後には車で30分くらいの所にあるいつも診てもらっている整形外科で頸と背中のレントゲンを撮って診てもらったが全く異常は無かった。

 病院から帰ってくるとばあさんは寒いと言ってベッドに入って寝てしまった。「検査したけれど、どこも悪くないから、大丈夫だって」というぼくの声も耳に入らないようだった。時たまトイレに行きたいときにはナースコールが鳴るのでトイレに連れてゆく。もうこれは明日のコンサートはダメだなと諦めた。

 翌朝は昼前に起きて遅い朝食もとり調子が良さそうだったけれど、食事の後片づけをしてちょっと目を離したらもうしかめ面をして頸が辛いから寝ると言い出した。これから冬に向かってばあさんにもぼくらにもさらに辛い時期が続く。コンサートの開場は6時半だけれど、もうダメかなと思っていたら、そのままばあさんが寝てしまったので夕飯はカミさんが食べさせてくれることになりなんとか家を出た。コンサート会場に入ればもう携帯は使えないから、なんとかそれまで家から電話がないように。


 サントリーホールの会場内は開演時間が近づいても所々に空席があった。やはり不景気のせいだろうか、最近はクラシックのコンサートでは空席が目立つことも多い。もっとも海外からの演奏家のチケットが高くなりすぎたということもあるかもしれない。その日のコンサートのオーケストラであるドイツのバンベルク交響楽団は、正式にはバンベルク交響楽団=バイエルン州立フィルハーモニーというドイツの名門交響楽団だが、その成立の経緯はドイツの中でもちょっと毛色が変わっている。

 それは昔のプラハ・ドイツ・フィルハーモニーのメンバーがやはり戦後ドイツ人追放で東欧を追われたドイツ人音楽家たちとバンベルクという小さな町で作り上げた交響楽団がコアになっている。したがってその音色にはドイツを離れていたドイツ人達が持っていたよりドイツ的なものを求める欲求と、プラハで生まれたことからくるボヘミア的な香りも備えているとブロムシュテットも語っている。

 昨日の演目はベートーベンの交響曲第三番「英雄」と交響曲第七番だったけれど、弦の音色は深くかつ切れも良いように思う。さらに管楽器の濁りのない透徹した響きも印象的だった。後半で演奏された交響曲第七番の全力で駆け抜けるような第四楽章が終わった瞬間には鳥肌が立つような興奮を覚えた。久しぶりに心底楽しめたベートーベンの夜だった。 (cam:Xperia)

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 *ぼくはクラシック音楽もあまり詳しくないので、大抵は知人にCDを借りたり良いプログラムを教えてもらって一緒にコンサートに行くことが多いのです。大学の頃やドイツにいる頃はオーディオに凝っていたこともあってLPで聴いたりコンサートにもよく行ったのですが、会社に入ってからはどちらかというと忙しい時間の間をぬって細切れの時間でも聴けるジャズを聴くことが多かったですね。

 **ぼくはよく行く錦糸町のトリフォニーホールが音響もよく好きなのですが、昨日久しぶりに行ったサントリーホールはホール自体はよいのですが、変な話ですがホールの規模の割にトイレが小さすぎるのではないかと行くたびに感じます。トリフォニーホールでは男子トイレに外まで行列が並ぶことはほとんどないのですが、サントリーホールは休憩時間にはいつも長い列ができているような気がします。見た感じではサントリーホールのトイレはトリフォニーのトイレの三分の一くらいの大きさだと思います。これも良いホールの一つの条件だと思いますが…
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坊や

何んとか無事にコンサートに行けて良かった!ですね!
枯葉にみるJazzBest5参考にさせて頂きました。
by 坊や (2012-11-03 15:20) 

aya

ベートーベンの英雄、好きでした。
母がタンゴが好きで、レコード盤がたくさん家にありました。中には
クラシックも混じっていて、まぁ聞かされたというか、かけていたのを
自然と聞いていた状態です。 今の英語を聞き流すってとこでしょうか♪
覚えますね(^-^)V
by aya (2012-11-03 18:08) 

ナツパパ

ブロムシュテット指揮の7番、それは聞きたかった。
わたしはクライバーの7番をよく聞いています。
彼の指揮した4番、ライブ版は最高の出来映え、と思います。
by ナツパパ (2012-11-03 20:25) 

mimimomo

こんばんは^^
昨日新幹線で盛岡から帰ってきているとき、
仙台からドイツ人《ドイツ語を話ていたので》の音楽家《演奏家、これも楽器を持っていたので》と一緒になりました。
結構文化交流が盛んなのですね~
by mimimomo (2012-11-04 20:50) 

coco030705

こんばんは。
クラシックはあまり聞かないのですが、コンサートホールで聴くと音がすばらしいでしょうね。一度行ってみたいものです。
コンサートホールや劇場の設備は、聴衆や観客が気持ちよく楽しむのに大変重要な要素ですね。今夏行った新橋演舞場はそういう意味でもいい劇場だったと思います。
by coco030705 (2012-11-04 21:12) 

ryang

コンサートに行くことができて良かったです。
時々、心底、という自分の世界に集中できるように
時間がとれると良いですね。
by ryang (2012-11-04 21:54) 

kuwachan

特に女性はそうです。切実な問題です。
新しいホールはかなり改善されましたが、
休憩時間になった途端にダッシュすることもあります^^;
by kuwachan (2012-11-06 09:13) 

e-g-g

ブロムシュテットのベートーヴェン、
きっと王道?のベートーヴェンだったのでしょうね。
バンベルクsoの響きが作りだす「英雄」、これは聴きたいですね〜
サントリーホールのトイレ、たしかに少ないです。
by e-g-g (2012-11-07 17:46) 

としぽ

何とかコンサートに間に合って良かったですね。
サントリーホールでクラシックを聴けるの良いですね。
たまには息抜きも必要ですね。

by としぽ (2012-11-13 16:41) 

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