SSブログ

○○家という生き方 [Music Scene]

○○家という生き方

Dsc02406b.jpg

 久しぶりに新日本フィルの公開練習を聴きに行った。今日はダニエル・ハーディングの指揮で行われる今週のコンサートの最終練習の一部が公開されている。今までも何回か公開練習を聴きに来ているが、指揮者によってそのスタイルや楽団員とのコミュニケーションのとり方も随分と異なっていて面白い。

 今までにもクリスチャン・アルミンクゲルハルト・ボッセなどの公開練習を聴いたけれど、今日のハーディングは今週末が本番の演奏会と言う割にはかなり細かいところまで指示をしていた。アルミンクとボッセの時はドイツ人だから通訳がついていたと思うけれど、今日のハーディングは英語で指示をしていたせいか通訳はいなかった。

 今日の練習曲はマーラー交響曲9番だった。席も自由に選べたので一階席ホール前半の12列あたりに座って聴いたのだが、そこは音のバランスがとてもよかった。マーラーの交響曲はいつ聴いても心に染み入る。ぼくは19世紀の世紀末ウィーンなどは実際には知らないはずなのに、その旋律を聴くと自分の中で何とも言えない郷愁のような感情が立ちあがってくるのを感じる。週末の本番のコンサートを聴きたかったが、その日は都合が悪く行けないのが残念。

 先程、指揮者によって団員とのコミュニケーションの取り方も違うと言ったが、音楽家同士のコミュニケーションという点では共通しているところがある。指揮者の言語がドイツ語だろうが英語だろうが殆どの指示は指揮者が身振りを交えて「♪ タリラ〜ラ」とか「♪ ンパ、ンパ」などと言語以前の声で充分通じるのだ。ぼくのような素人から見ればなんとも羨ましい世界だ。

  ぼくも子供の頃には写真家とか冒険家とか、○○家(か)という生き方に憧れたことがある。だけれども結局、音楽家、芸術家、評論家、翻訳家、建築家、作家、書家、探検家、冒険家、政治家、小説家、起業家、画家、陶芸家、落語家、声楽家、写真家、そのどれにもなれなかった。それどころか何らかの分野でのちゃんとした専門家にもなれなかった。

  経営[者]の端くれにはなったが、実業[家]にはなれなかった。世間や会社という組織の中では色々な経験はしてきたが結局はジェネラリストという根無し草のような存在になってしまった。広い視野を持つという点では経験は役に立ったが、最終的に軸足を置く場所は見つからなかった。 ○○[家]というのは、△△[士]や××[師]のように国や公的機関に資格として認めてもらう必要はない。従って「ぼくは写真家です」とか「オレは画家だ」と言えば今日からでも名乗ることはできる。

 そういう意味では今からでもそう称することは可能かも知れない。要するに○○家という生き方は、それにどれだけ自分自身の中で自負を持っているか、そして周囲や時代がそれをどこまで認めているか、というとても微妙な関係の中で成り立っているのかもしれない。 ○○家の「家」という意味は辞書で見ると専門の学問や技術の流派、もしくはそれに属する者を示すらしいから、いずれにしても何らかの専門性が必要だ。

 ○○家 というのはその専門分野における生業を示す言葉であるけれど、それ以上により高いレベルの真の○○家というものに向かった生き方そのものであるように思う。と言うことは、例え名乗ってみたところで、そうおいそれと本物になれるわけではない。

 あ、そうだ、ぼくでも今からなれる○○家があった。浪費家とか倹約家ぐらいなら今からでもなれそうだが、浪費家では金が続かないから、なれるのは倹約家くらいか。まぁ、その辺で我慢しておこう。




MP900402846.JPG



nice!(24)  コメント(5) 
共通テーマ:blog

nice! 24

コメント 5

ぷーちゃん

あっ、久々おおたか静流
聞いてみよ♪
by ぷーちゃん (2012-01-20 08:35) 

engrid

浪費家にも、倹約家のもなれない
中途半端ですね
by engrid (2012-01-20 16:32) 

aya

何家になれるか、考えるくらい、何も無い・・・
ありそうだけど、みな中途半端(´エ`;)、それに気が付いただけでも
今年の収穫と思って、何かを求めて 今年一年頑張ってみます♪
by aya (2012-01-20 22:09) 

としぽ

オーケストラの練習風景を見られるのは楽しいですね。
指揮者によって色々と違いがあるから面白いですね。
子供の頃には色々となりたいものが有ったが、結局は普通の会社員で
終わってしまった。
by としぽ (2012-01-21 09:52) 

e-g-g

ほんとうに、自己と周囲・時代との微妙な関係で
成り立っているのが「家(か)」ですね、
最近?増えている「○○研究家」などその典型かと。

もうかれこれ10年は経つでしょうか、
ハーディングはずっと注目しています。
実演は、ベートーヴェンの5番と6番のシンフォニーしか
聴いたことがありません。
マーラーもぜひ聴いてみたいものです。
by e-g-g (2012-02-02 14:51) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント