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ニュースの残像 ~ギャンブル化する世界経済~ [Column Ansicht]

 ニュースの残像 ~ギャンブル化する世界経済
   サブプライムローンの本当の怖さ

 アメリカのサブプライムローン問題は対岸の火事のような気でいたのが、どうやら日本にも大きな影響を与えそうだということが分かって、やっとマスコミも騒ぎ出した。サブプライムローンの債権が色々な金融商品に組み込まれ、結果としてそれらの商品が汚染されているらしいということはかなり前からわかっていた。常識的に考えれば年収が二百万円くらいしかない低所得者に数千万円ものローンを貸し付ければ、いつかは焦げ付くことぐらい素人でも分かりそうである。事実、多くの場合貸主もそのことは承知していた。

 一般的にはローンがあっても不動産価格が上がるから担保力はかえって強化されるということが言われているが、ローン返済額はある時期から急激に増える契約になってるので、そのうち不動産を手放さざるを得ないのは目に見えている。さらに不動産価格自体もどこかで頭打ちになるから、どこかで破綻することは避けられなかったといっていい。それでは、そのようなことが分かっているのに、なぜ今回のようなことが起きたのだろうか。

 それには大きく分けて二段階の要因があると思う。そしてそれらの要因はこれから日本でも本格化してくることによって日本でも新たなリスクが生じてくる。まず第一段階は貸付と債権回収の機能の分離である。つまり以前は基本的にはお金を貸し付けた者がその貸付金、つまり債権を回収しなければならなかったが、現在ではサービサーという債権回収専門業者に回収を依頼することが出来る。(日本ではまだ一部制限されている部分もあるが) 第二段階は債権流動化と称して貸し付けた債権を他人に売却することができることだ。この二つの段階によって、債権は当初の貸付者の手を完全に離れてしまう。つまり悪質なローン業者は回収のことなど考えずに、いわゆる「貸し逃げ」することが可能になる。

 今回のサブプライムローンでも多くの場合貸付業者はすぐに債権を売却して、利ざや稼ぎをしている。というよりは、それが第一の目的である。債券はもちろん売られる時に統計学的なデフォルト率(貸し倒れ率)等のリスク表示はなされるが、それらは先ほどのような貸付現場の実体を反映してはいない。特に一般消費者が相手のローンは社会情勢雇用環境、その国の国状等で貸し倒れ率は大きく変わってくるため、過去の統計なぞはさして参考にならない場合が多い。貸付現場の実情を知らない買う側は、一見論理的に見える膨大なデータをつけられたそれらの商品に目を奪われて買ってしまうのだ。

 そのような債権が金余りの金融市場に急速に流れてゆき、他の金融商品にまぎれて細菌のように感染してゆく。いずれは破綻するのだから、ババ抜きと一緒で誰が持っているときにはじけるかだ。日本の証券会社や金融機関もそのような債権を意識するかしないかに関わらず運用の一環として買っている。日本でも先の金融改革以来、この貸付機能の分離、つまり貸付と回収の機能の分離、と債権の流動化が急激に進展しつつある。従って、今後日本はそのような債権をつかまされる被害者としての立場だけではなく、そのような危険な商品を作り世界に送り出す加害者の立場にもなりる可能性を持っている。

 実際の資金ニーズが発生する現場の実体とかけ離れたところで、いろいろな債権がマネーゲーム化してゆくのは、このサブプライムローンの問題に限ったことではない。このようなハイリスクの貸付債権、不動産の賃貸料から、はては映画や演劇の興行収益権までありとあらゆる不確定要素を含んだ債権がマネー市場に流れ、世界はこれから益々「ギャンブル経済」化してゆく。これらから我々はどう身を守ればよいのだろうか。

                  


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としぽ

これから未だ被害が増大しそうですね。マネーゲームだから仕方ないが
やっと株価も回復してきたと思った矢先の株価の暴落は痛いですね。
早く回復して欲しいですね。
by としぽ (2007-11-22 20:55) 

manamana

日本でも住宅金融公庫のゆとり返済を利用した人が
当初のゆとり期間を終えたときに破綻するケースが結構あるそうです。
by manamana (2007-11-25 12:01) 

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