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昭和五十年八月号 [あの時の文春]


30年の時を越えて… あの時の文春

 春に南ベトナムが崩壊して日本にも重苦しい空気が流れていた。日本は極東の非常時に本当にアメリカが日本を守ってくれるのかと言う不安感にかられた。
7月に沖縄海洋博が開かれるといよいよ沖縄が本土に復帰した実感が湧いてきた。沖縄は基地の島であることは何ら変わらなかったが、マスコミにあおられた海洋博ブームが沸きあがった。
だが8月4日、海洋博に水をさすように日本赤軍がクアラルンプールのアメリカ・スウェーデン大使館を占拠。日本政府はゲリラの要求に屈し拘留中の赤軍派の7人を釈放しクアラルンプールへ移送した。


昭和五十年八月号(1975)

①Cover Story
▽決定版 戦艦大和の最後…吉田満、原勝洋
-日米全調査 戦艦大和
-近代史上最大のスペクタクルともいうべき帝国海軍の象徴大和の最期はいま生存者の証言、日米秘匿文書によって戦後初めて全貌を再現された
-戦艦大和の死こそ帝国海軍という一大文明の終焉であった。名作「戦艦大和ノ最期」の著者吉田満氏と若い世代の原勝洋氏は年齢を超えて見事なチームワークを発揮し、大和の"死"の真相に挑んで構想数年、全生存者の証言を求めることは勿論、米海軍省の秘匿文書の入手にも成功した。いわば、戦後三十年にしてはじめてできる迫真の"人間ドラマ"が、今ここに誕生することとなったのである。

②Main Articles
~戦後教育はこれでいいのか~
▽国家100年のための 新・教育宣言…明日の教育を考える会
-人類の歴史上、能力主義をとらない社会は停滞と滅亡しかなかった。「能力差」を無視し、「ひとしさ」だけを強調した戦後教育のゆがみを是正するために、今我々は提言する---勇気をもって知的能力の能力差を認めよう、と 

*Ansicht…文春お得意の「○○を考える会」の名前での提言記事。文春は署名記事を前提としているから、ドラスティックで挑戦的な記事を載せるときは、特定の個人が非難の集中砲火を浴びないようにする配慮か、そういう時には「○○を考える会」という名前を使う。
この提言記事も当時の日教組のやり方に真っ向から異を唱えた提言記事だ。当時の初等教育の現状を悪しき平等主義とし批判している。
 生徒を差別しないように全生徒の通信補を「3」にしたり、運動会で着順を決めるのをよそうなどという愚かな例を挙げて、日教組のやり方を糾弾している。
知的能力の能力差を認める教育を提言しており、知能の高い子供がそうでない子供のレベルに合わせられ犠牲になっていると断じている。
 現在では、ここで例に挙げられているような歪な「平等主義」に賛成する人は少ないと思うが、一方この提言の中で少し気になるのが、IQなどの「知能」を最優先すべき資質として選別を行うことが強調されていることだ。
提言の第一に、「提言第一…すべての教育はまず能力とりわけ知能の個人差の確認からはじめよ」を掲げている。前段ではIQと社会階級、学歴とIQ、両親のIQと子供のIQなど知能が遺伝的に形成されるものであることが強調されていたりして今となっては、これはこれでアナクロニズムな感じがするが…。
今、初等教育は「ゆとり教育」からの軌道修正の途中だが、30年間の間に、ビジネスやサラリーマンをとりまく環境は既に競争至上主義に振れようとしている。

▽数学教育を歪めるもの…小平邦彦
-小学校への電卓の導入は文明滅亡につながる
▽法政大学に何が起こっているか…里見五郎
-今日の混乱を生んだのは戦後の学園民主化だ
~あるルポライターの死~
▽田中角栄研究を書いて死んでいった夫…児玉正子
-夫のガンを知らされながらも、強く献身的に努めた児玉隆也夫人のもうひとつの「闘病記」
~人間研究~
▽現代の英雄 森進一の涙…山本章
-集団就職から歌謡界の"トリ"にまで登りつめ、はや伝説につつまれた青年のみせた素顔
*この記事の中では森進一は何よりも家族の絆を第一に生きてきた、となっているが、30年の歳月は人を変えてゆくのか。

③Others
▽佐藤栄作をどう評価するか…座談会
▽屈辱講和の後遺症…加瀬俊一
▽日本人とマグロの経済学…上前淳一郎
社会党三つの発火点…赤坂太郎
*かってそんな党もあったなぁ。日本国民はイギリスの自由党と労働党のように二大政権党の夢を託したこともあったような気がする。民主党は社会党の二の舞になるのか?
▽住宅騒動を起こそう…中村武志
▽九十歳でもゴルフはできる…出光佐三
▽自動車ははたして有罪か…北條誠
▽婦人警官が学生狩りをした町…野坂昭如
長島はなぜ批判されない…座談会

-華々しくスタートした長島ジャイアンツはなぜ弱いのか。巨人軍のOBたちがズバリ指摘する長島野球の欠陥。
*ミスターは日本のマスコミが作った虚像なのか、それともメディアを超越した存在なのか。
▽イギリス・フランスのなぞなぞ…倉田保雄

  */Ansichtは筆者のコメント、他は文芸春秋の見出しの原文ママ

④おまけ
・この年の今月生まれた人…米倉涼子
・この年の今月亡くなった人…ショスタコービッチ(作曲家)


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ナツパパ

 30年前の今月号も大変興味深く拝見しました。
現在も、戦後体制という大枠から踏み出せていないのだなぁ、と思います。
冷戦の崩壊やバブルは、日本人にとって、結局コップの中の嵐に終わって
しまったのでしょうか。
by ナツパパ (2005-08-01 13:50) 

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