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東京が東京であった処 [Ansicht Tokio]

東京が東京であった処

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 大手町の旧東京中央郵便局のあとにできた(といってもファサードだけは古いビルの外観が一部残されているけど…)ショッピングモールKitteに行くと必ず寄るところがある。それは4階にある旧東京中央郵便局長室で、そこからは駅舎再現修復と駅前広場整備の終わった東京駅がよく見えるのだ。

 背後に高層ビル群を従えた東京駅駅舎の姿は威風堂々としている。ヨーロッパの駅舎も趣があって好きなのだけれど、東京駅のように数えきれない程の本数のプラットホームがあってバリバリの現役で、しかもそのエリアがオフィス中心街になっているというところは少ないと思う。

 ヨーロッパの駅は鉄道が実用化されるはるか前に石造りの旧市街が出来上がっていたため各方面から大都市に入ってくる鉄道の駅は街を通過出来ないので旧市街の縁までの引き込み線になっている場合が多い。鉄道が各地方から入ってくるので駅の名前も大抵方面別に「西駅」とか「東駅」とか「中央駅」とかの名前がついている。日本で駅前というと中心地のように思えるが、ヨーロッパではそうとは限らない。

 ロンドンにも、パリにも、ベルリンにも、そしてウィーンにもその都市の名前だけの、例えば「ウィーン」という駅は無い。ウィーンの場合でいうとぼくが初めて訪れた大昔は「ウィーン南駅」と「ウィーン西駅」というどちらも引き込み線タイプの終着駅があったのだけれど、今では南駅は通過式の駅として中央駅に生まれ変わった。しかし名前は「ウィーン駅」ではなく「ウィーン中央駅」である。

 そういう意味では世界有数の大都市東京でシンプルな「東京」という駅名が存在していることは珍しいかもしれない。普通なら「東京中央駅」もしくは「大手町駅」となりそうなものだけれど…。それはもちろん常に膨張を続けてきた東京という街の歴史を背負った駅名なのだと思う。東京駅ができたとき、新宿も渋谷も池袋も今では想像できないほどの田舎だったはずなのだ。

 上野だけが比較的早くから北の玄関口としての機能を果たしていたから、上野は「東京北駅」なのかもしれない。この旧東京中央郵便局長室から東京駅を臨むとそんな東京駅=東京だった頃の東京の姿が脳裏に浮かんでくる。ぼくは東京で生まれ育ったのだけれど、最近東京の街なかを色々と歩き回っていると各所に「江戸」の名残は残っているのだけれど逆に東京駅ができた明治・大正の「東京」の名残が意外と少ないことに気付いた。



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