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夏なのに [新隠居主義]

夏なのに

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 ■ かなしみ

 あの青い空の波の音が聞こえるあたりに
 何かとんでもないおとし物を
 僕はしてきてしまったらしい

 透明な過去の駅で
 遺失物係りの前に立ったら
 僕は余計に悲しくなつてしまつた


 Sadness

 Somewhere in that blue sky
 where you hear the sound of the waves,
 I think I lost something incredible.

 Standing at Lost and Found
 in a transparent station of the past.
 I became all the sadder.

 (谷川俊太郎 『二十億光年の孤独』 英訳 William I. Elliot and Kazuo Kawamura)



 いつも今頃になると決まって、以前行った沖縄の海を想い出す。その頃は毎年のように冬の沖縄に行っていた。夏なのに想い出すのは冬の沖縄の海で、人気(ひとけ)の無い静かな海だ。沖縄の海だって天気の悪い冬の日の海は際限なく不機嫌で陰鬱な海になるけれど、時たま想い出したようにやってくる夏めいた光がさすと、そこは一瞬にして世界で一番美しい場所になる。今年の冬こそまたそんな海にお目に掛かりたい。夏なのに、もう冬のことを考えている。本日、東京梅雨明けす。


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  *ぼくは谷川俊太郎氏の詩が好きなんですが、
それは彼の詩を読むと自分の脳裏に絵が浮かんできて、
どこかで言葉と映像が結びつくような愉しさが感じられるというのも一つの理由だと思っています。

  ぼくが好きな谷川さんの詩集「東京バラード、それから」は彼の撮ったモノクロの東京の写真と
彼の詩で組み上げられた素敵な詩集ですが、そのあとがきの中で谷川さんはこう言っています、

「…詩も写真も、物語と違って時間に沿って進むのではなく、
むしろ時間を一瞬止めることで時間を越えようするものかもしれません


写真を撮ったこの日も、石垣島で、
それまで冬の日の空はどんよりと時には空から雨粒さえも、
それがある時夏の日を想い起させるような光が空を覆い…

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coco030705

こんばんは。
夏っていうと、明るく開放的で花火とかお祭りとかがクローズアップされますが、個々人にとっての夏というのは十人十色のはずですよね。
悲しい夏というのもあるし、心が寒い夏もあるし……。
写真が「時間を一瞬止めることで時間を越えようするものかもしれません」というのもわかるような気がします。時間を切り取って、それを永遠のものにするということなのでしょうか。
by coco030705 (2012-07-18 23:30) 

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