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誰にも会わない [新隠居主義]

 誰にも会わない

 

 今、Second Lifeが話題になっている。セコンド・ライフといっても、定年後の第二の人生のことではないらしい。いわば現実の人生を第一の人生とすれば、バーチャルな中でのみ存在する第二の人生のことをSecond Lifeといい、まさにその名前で展開しているインターネット上のソフトが今話題になっている。もとはアメリカの一企業が開発したソフトだが、いま日本にも上陸しつつある。

 ネット上に構築された町や生活空間に本人の分身であるアバターが生活し、その中で他の住人とコミュニケートしたり買物なども出来る。通貨はそのSecond Life上でのみ通じるリンデンドルというデジタル通貨であるが、ミソはその通貨はドル等の実際の通貨と交換が可能なことだ。つまりそこで買物をしたものは現実に届けられるし、その空間で儲けた金は現実の通貨に替えることが出来るのだ。そこには既に200万人以上もの住民がおり、従っていろいろな経済活動も発生している。

 今から十年以上も前になるだろうか、日本にもそのような動きがあった。ある商社が中心になってPC上にバーチャルな大規模ショッピング・モールを作りそこで経済活動を行おうという試みがあった。そのときもやはり自分の分身が商店街を歩き、知り合いに出会ったり、イベントに参加したりという仕組みがあったのだが、コンピュータの技術がまだ熟していなかったこと、ネットで繋がっているユーザーが少なかったことなどもあって、うまくいかなかった。当時ぼくのいた会社でもその研究はしたがまだ環境が熟していないという感触を得た。それが今では現実のものとなっている。コンピュータ技術の進展、高速通信、PCの普及、PCゲームなどで培われたバーチャルリアリティへの違和感のなさ、インターネット取引などの金融手段の充実等インフラの進展がそれらを支えている。

 現在の環境でも、もはや現実の人間には誰にも会わず、言葉も交わさずに日常生活を送ることは不可能ではなくなっている。某大手電機メーカーが行ったようなインターネットを通じた大規模な在宅勤務制度やデイトレーダーなどネット上のみで生計を得ることも可能だ。報酬はもちろん銀行振込で送られてくる。買物もインターネット上でできるし、日常の生鮮食品などについても生協等の宅配ボックスを自宅に設ければネットで発注して宅配ボックスで受け取るという方法で誰にも会わずに日常の生活することが可能だ。

 先ほどのSecond Lifeの話に戻るが、その空間で生活するのが快適だと考えている人の多くが、それが「現実の生活より制約のない自由な生活が出来る」ということを理由にあげている。確かに好きな時に好きなことが出来るし、嫌ならアクセスを拒否したり、最悪の場合はリセットしてしまえばいいのだから楽だ。しかし、その空間で実際の経済活動などが行われるようになれば、なんらかの義務が生じてくるはずである、そしてそれを負うのは自分の分身のアバターではなく現実の自分であるということに気づくはずである。このSecond Lifeの運営者のコメントによれば3Dの仮想世界の中に自由・平等・平和な世界を作り出したいということだが、自由に生活できるバーチャルの空間を求め、それを構築する努力を、少しでも現実の世界をもっと自由なものにすることに振り向ければ、少しづつでも世界は変わってゆくはずであるが…。生身の人間に会わずに理想的なバーチャル空間で生きてゆく世界の向こうにはどんな幸せが待っているのだろうか。百年後の世界にはどんな幸せの形が待っているのだろうか。
                      
 考えてみればスイカのようなデジタルマネーなど現実の生活自体がバーチャル化していることの方が問題かもしれませんね。給与は振込みで、支払いは銀行引落か、クレジットカード。小銭はスイカのようなデジタルマネー。現実の貨幣を見ないで日々の生活が進んでゆく。働いた対価が目に見えず、デジタルの数字だけが目の前を通過してゆく。旧来の消費行動を支えていた伝統的な金銭感覚というものが崩壊しつつあるような気がします。

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としぽ

こんにちは。バーチャル社会で現実社会と同じような行為をして現実社会でも使えると言う事になると、もうバーチャル社会では無い様に思えますね。
今は便利さを追求しているような気がします。
by としぽ (2007-05-27 18:17) 

便利は不便のはじまりでも
ありますね。^^
by (2007-05-27 19:44) 

kan

誰にも会わない。
人間性は保たれるのでしょうか?
by kan (2007-05-27 20:05) 

Silvermac

先日、テレビで観ました。よく分からなかったのですが、このお話で大分理解できました。私達の頃は給与は現金、第二の人生で初めて銀行振り込みになりました。
by Silvermac (2007-05-27 22:13) 

くみみん

こんばんは。
確かに現実のお金を持たないでも生活できますよね。いいような怖いような(^-^;
人間通しのコミュニケーションってなくっていいものなのかなあ?なんだか寂しい!
by くみみん (2007-05-27 22:36) 

写真のお婆さんは三越の買い物でどんな会話をしたのでしょうか?
買い物には「ごめんください」と店に入って行った世代です。
豆腐はボールを持って、買い物カゴをさげて・・・子どもだったので緊張しながらでも、おつかいをとおして、社会と関われていたような気がします。

こんな世の中は・・・いやだな。
今のスーパーもコンビニも似たようなもんだけど。益々、利己主義者だらけになりそう。
by (2007-05-27 22:52) 

coco030705

こんばんは。
バーチャルな世界だけで生きていくなんて、なんともったいない
生き方なんでしょうね。
土日と南淡路島へ大学のクラブの同窓会で行ってきました。
おいしいものを食べて、ゆっくり温泉につかって、美しい景色を見て、
友人達と学生時代に戻って、ワイワイやりました。
色々なものを肌で感じること、友人と楽しく話すことこそ、人生の
醍醐味なのに、脳の世界だけで生きていくなんて、生まれてきたかいが
ないと思いました。
by coco030705 (2007-05-27 23:50) 

Baldhead1010

私はバーチャルな生活より、退職後の第二の人生が気がかりです^^;
by Baldhead1010 (2007-05-28 07:47) 

engrid

答える人がいないと分っていても
『ただいま』 の一言は口にのぼります
温かさが やはり欲しいように思います
by engrid (2007-05-28 14:50) 

ミヤ

何がなんだか、分からない世の中になりそうで、
かなり不気味・不安です。
by ミヤ (2007-05-28 22:48) 

テリー

セコンドライフのようなネット上でのバーチャルゲーム、やったことはありませんが、映画上では、色々あり、日本でもきっと流行してkると思います。
電子マネーは、マイレッジから、エアラインの電子マネーに好感でき、それが、空港のレストランショップで、お金と同じように使用でき、便利に活用しています。いかに、うまく活用するかという点もあります。
by テリー (2007-05-29 08:12) 

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