SSブログ

遅いっ!  モノクロニックな日本 [にほんご]


 先週、韓国の就学生数人と横浜に遊びに行こうということになって、鶴見の駅で10時半に待ち合わせて行くことになった。一行は日本人4人と韓国人6人のグループになった。当日は「ソウルタイム」といって、時間通りには来ないことがあると聞いていたので20~30分位のアローワンスは持っている必要があると思った。

 当日、日本人はもちろん全員時間通りに来た。(日本人といっても年輩者が多かったので、今の人よりは時間に律儀だ) 韓国人の方は時間通りに来たのが一人。彼は韓国では15分くらい遅れてくるのが普通だ、と言っていたが、その後15分から30分遅れの中で、さみだれ的にやってきた。最後の一人は待ち合わせ時間を少しすぎたところで電話が入り、今起きたところなのでこれから行く、という。結局、皆で喫茶店で彼女を待つことにして、一時間半遅れでの出発となった。最初に来ていた韓国人のSさんは、さすがにこれは韓国でも例外的な遅れ方だ、と言っていた。


 これで短絡的に結論を出すことは、たった一回の出来事なので危険だ。 が…、まじめな韓国の就学生であるSさんが言った、韓国では約束に15分くらい遅れてゆくのは普通、ということろが印象に残った。韓国の時間感覚には「のりしろ」があるような気がする。それはそれで悪くはない。

日本では人と約束したら5分前か時間きっちりには行くのが常識だと思う。(今の若い日本人はどうであるかはよく分からないが、しかし遅れれば言い訳は言う)日本では時間を守ることに少なくとも社会的な価値を認めている。で、普通の日本人は世界中がそういう価値観を持っていると思ってもいる。だから違う国に行って時間通りにことが運ばないと「いい加減な国だ」と思ってしまう傾向がある。でもそれは狭すぎる見方かも知れない。


 ここでまた先日話したエドワード・ホールというアメリカのおじさんが面白いことを言っていて、時間には文化的時間概念があるらしい。時間の感覚にはPタイムMタイムと言うのがあり、Pタイムとはポリクロニックタイムの略で、同時に多くのことが進行してゆく。つまり人と何時に約束していても、例えば大事な友人が来ればそちらの用を済ませてから約束のところにいく。または同時刻の約束を複数する、というような中東、中南米や南欧の時間感覚に近い。

一方、Mタイムとはモノクロニックタイムの略で一度に一つのことのみ処理する、いわば課題遂行型、時間厳守型の時間感覚だ。日本やアメリカ、北ヨーロッパなどがそれにあたるらしい。このどちらが今までの産業社会に適した時間感覚であるかは言うまでもないと思うが、どちらが「良い」システムかは一概に言うことができない。

幸いにしてと言おうか、不幸にしてと言おうか日本人は明治維新以来ずっとMタイムに大きな価値を見いだしてきた、そして今ではそれが日本人の「気質」のようになっている。むろんそれが日本人労働者のいわばファンダメンタルな力となって今の産業社会を支えている。会社で約束の時間に人が集まれないようでは、会議一つもまともに開くことができないからだ。これは「文化」だから一朝一夕にはできない、つまり日本の競争力を支える重要な資質だったと思う。この点については海外で仕事をしたいろいろな人が実感をもって語っているし、僕もそう思っている。


 しかし今、日本人のMタイム信仰に大きな影がさしていることも事実だ。

その理由は

一つはコンピュータと通信手段の発達による「ユビキタス社会」の到来で、何時にどこそこにいなければならないという形で時間に縛られる必要性が薄くなりつつあるからだ。会議も定時に集まらなくてもメールなど時間に拘束されないメディアが可能だし、待ち合わせに遅れたりしても携帯で連絡がとれるのでトラブルが回避できるなど、単に時間を守ることの価値が相対的に低下しているのではないだろうか。

二つ目は、Mタイム型システムが必ずしも人を幸せにする唯一のシステムではないことに、我々日本人が気がつき始めているのではないか。Mシステムはその性質上、「効率」という概念と隣接している。しかし本来は別のものであるはずである。産業社会の発展という要請の下にこの二つの概念は隣接することになった。「効率」が優先してMタイムが単なるその手段となったとき、先のJR西日本の脱線事故のような悲惨な事故をおこすリスクを抱え込むことになるのではないだろうか。

「時間を守る」ということは、今でも日本人の優れた特質であり、国際的にみれば人的競争力にもなっていることは間違いないが、ここらでもう少し余裕のあるシステムを考えてみる必要はないのか。

 


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0