SSブログ

Tokyo Blue [Ansicht Tokio]

Tokyo Blue

DSC01018.JPG

 ■ あどけない話
 智恵子は東京に空が無いという
 ほんとの空が見たいという
 私は驚いて空を見る
 桜若葉の間に在るのは
 切っても切れない
 むかしなじみのきれいな空だ
 どんよりけむる地平のぼかしは
 うすもも色の朝のしめりだ
 智恵子は遠くを見ながら言う
 阿多多羅山の山の上に
 毎日出ている青い空が
 智恵子のほんとの空だという
 あどけない空の話である。
  (高村光太郎)

 歳をとってから冬は苦手になったけれど、東京の冬の空は大好きだ。都心に出るためライナーを待っている間、駅の壁の隙間から覗く東京の空は素敵だ。雲ひとつない晴天という言葉があるけど、ぼくはサッと刷毛ではいたような、或いはポッポッとアクセントのように雲のある青空の方が好きだ。

 

 高村光太郎の詩によると智恵子は東京には空がないという。この詩の詠まれたのは昭和の初期だがその頃でも地方に比べれば東京の空は汚れていたというのはわかるような気がする。もちろんその頃のことはぼくには分からないが安達太良山の上の空はずっと青かったのかもしれないけれど、東京の青空は時代を映して紆余曲折を経ている。

 

 ぼくが物心ついた頃覚えているのは、近所の原っぱから見上げた冬の日の抜けるような青い東京の空だ。戦争、そして東京大空襲で焼け野原になり全ての生産的な施設も失った東京の上に広がっていたのは紛れもなく青い空だった。しかし、それはやがて経済復興、高度成長の進展と共に小津安二郎の映画「東京物語」に出てくるような下町の上に広がる灰色の空に変わっていった。

 

 東京が青空を取り戻すのには大分時間を要したし一筋縄ではいかなかった。環境汚染対策や環境保護技術の進展もあるけどやはりバブル崩壊もその要因になっているかもしれない。それに脱化石燃料の動きも寄与しているのだろうけど、それは一方で原発問題を引き起こしてもいる。さまざまな想いを映して東京の空は正直だ。今、ライナーの車内から眺める東京の空はTokyo Blueに染まって眩しいくらいだ。今のうちにスマホから目をあげてこの青空に浸っておこう。

 

 ■ 冬青空 わが魂を 吸ふごとし (相馬遷子 「山河」)

 


DSC01022.JPG


j0079069.gif
AnsichtTokio01.gifBlue Heaven
もうすぐ…
荒川土手

nice!(40)  コメント(5)