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巡礼みたいに [gillman*s Lands]

巡礼みたいに
 
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 長い旅に出るのは実にコロナ以来久しぶりの事だ。今月で手術してから丁度一年になる。旅に行けることを一つの目標にしていたので行けたのは良いけれど、それよりも見切り発車で行ってしまったという方が正しいかもしれない。ステッキをついてドイツの石畳の道を歩き回るのは苦行のように思えたときもある。何だか巡礼みたいだな、と。

 とは言えそれは一つの区切りにもなったことは確かだ。今回訪れた街は殆どが以前にも訪れた処がほとんどなのだけれど二十数年ぶりの街もあれば、中には五十余年ぶりの街もあったりしてその間に変わったもの、変わらなかったものが心の中を去来した。アーヘンの大聖堂のステンドグラスはこんなにも美しかったのかと改めて感動した。若いころ見たときには確かにすごいけれどこんなに感動した覚えはなかった。パリのノートルダムの薔薇窓にもこれほど感動はしなかった。

 逆にマウルブロンのクロスター(修道院)は若いころ訪れてこれこそぼくの心に描いていてたドイツそのものの姿だと感動もし、ずっとそこに居たいと願った場所だったのだけれど、世界遺産に指定されたらしい現在はそういった空気、雰囲気は残ってはいなかった。何だか見てはいけないものを見てしまったような…。自分も観光客として来ていながらそれは矛盾しているけれど、特に21世紀に入って顕著になったオーバーツーリズムというものが、その土地の空気を攪乱し陳腐なものにしてしまっている気はした。

 自分が青春を過ごした静かな街だったハイデルベルクも丁度秋祭りの時期だったとはいえ、町中がまるでディズニーランドのようでどこにも日常の生活臭は残っていなかったのは寂しかった。当時学生の頃は憧れだった目抜き通りの伝統的高級ホテルZum Ritterで昼食をとったけれど、混みあっていてそそくさと急がされて感傷に浸っている間はなかった。恐らくはもう訪れることもないこの街に別れを告げる時、もう少し静かな時期に来ればよかったかな、と。ドイツも大きく変わった気がする。コロナ以前は主に旧東ドイツ地区を旅することが多かったので南部、南西部ドイツは久しぶりなのでよけいに感じたのかもしれない。
 
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hagemaizo

確かに杖をついた巡礼が見えてきました。
by hagemaizo (2024-10-26 20:35) 

TaekoLovesParis

青春時代の思い出の地、いらしたのですね。街の変化を自分の変化と照らし合わせながらの旅、感慨深いものだったことでしょう。これからの生活の糧になっていきますね。
by TaekoLovesParis (2024-10-26 22:48) 

めぎ

憧れの高級ホテルレストランに入ってみたら…のくだり、大いに共感します。昔はお金無くて入れなかったところ、今は入れるけど、今はあの頃の重みがもう無いんですよね。
杖を突きながら頑張ってドイツまでいらして、新たな感動もあれば悲しい失望もあって、現状を知って、懐かしい過去を遠く振り返って、ある意味ものすごく充実した旅だったのではないでしょうか。
私もいつか、それを日本でやる日が来るのだなと想像しました。
by めぎ (2024-10-26 22:51) 

coco030705

こんばんは。
ドイツの懐かしい都市を再訪の旅だったのですね。
それにしても、ハイデルベルグがオーバーツーリズムで外国人がいっぱいなのですか。私も行ったことがありますが、とてもきれいな小さい街でいい印象が残っているところです。
日本も、京都は本当にひどくなっていますね。やはり円高にならないとオーバーツーリズムはなくならないのでしょうか。日本も国力が落ちているので、円高はいつ訪れるのか、不安になります。
by coco030705 (2024-11-02 22:22) 

ナツパパ

心に残るご旅行と拝見しました。
記事の文章からにじみ出てくるgillmanさんの心が、
読んでいて胸を締め付けます。
わたしは70になって、これからそういう旅をしてみたい、と思います。
by ナツパパ (2024-11-10 10:51) 

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