SSブログ

むず面白いドイツ語 [新隠居主義]

むず面白いドイツ語
 $もう50年以上ドイツ語から離れており、使うのはせいぜい旅行の時くらいでそれも簡単な旅行ドイツ語だけだから殆ど使っていないに等しい。もともとそんなに話せるわけでもなかったが、最近それも何か寂しいなぁと言う気がしてNHKラジオのドイツ語教室を聴くようにしている。

 20年以上前、まだ勤めている頃にまた時間が出来たらドイツ語を勉強したいなと思ってとりあえず独検なるものを受けて2級は受かったのだけど、1級目指して勉強しようと思っているうちに忙しさにかまけて諦めてしまったので今はそれ以下だと思う。

 NHKラジオのドイツ語を始めたら今度はコロナ禍で新しいテキスト内容が更新できないので1クール同じ内容をやるということが…、まぁ、急ぐわけでもないから。たまにアジアからの留学生にドイツ語ってどんな言葉ですか、と聞かれることがある。説明はなんとも難しいのだけれど、雑談で時々「ドイツ語あるある」みたいな事を話すことがある。
 

DSC05671b.JPG

 
[ドイツ語あるある]

①それ、何でやねん
 ドイツ語の全ての名詞には「性」というものがあって、それはフランス語やイタリア語、スペイン語などにもあるのだけど、大抵は語尾で判断出来たり大半は男性か女性のどちらかなのだけれど、ドイツ語には中性もあってややこしい。
例えば
 ・スプーンはder Löffelで男性名詞
 ・フォークはdie Gabelで女性名詞
 ・ナイフはdas Messerで中性名詞
と言う感じで訳がわからない、覚えるしかない。その内勘が働くようにはなるけど、明確な法則はない。

②単語がやたらと長い
 ドイツ語は単語がやたら長くなるので嫌だと言う人がいるけど、ぼくは逆に好きだ。実はドイツ語の基本単語数は意外と少ない。その少ない基本単語を組み合わせて新しい概念の言葉を作る事が多いからだ。ある意味では日本語も造語能力と言う点では似ているかもしれないのだけれど、日本語の場合、漢字の羅列ということであっていわゆる基本単語とは異なるかもしれないが。

例えば
 ・Die Streichholzschachtelというのはマッチ箱のことなのだけれど、これは「擦る」+「木片」+「箱」という3つの基本単語を組み合わせて出来ている。
 ・Unabhängigkeitserklärungen 独立宣言
 ・Geschwindigkeitsüberschreitung スピード違反
 ・Waffenstillstandsunterhandlungen 停戦交渉
 ・Stadtverordnetenversammlungen 市議会
など毎日のニュースなどで頻繁に長い単語が出てくる。これは基本単語が頭にしっかり叩き込まれていれば反射的に読めるのだけど、これが外国人には結構しんどい。

 アメリカの文学者マークトゥエインはこう言っている。
Some German words are so long that they have a perspective.
These things are not words, they are alphabetical processions.
いくつかのドイツ語単語は、あまりにも長すぎるので、奥行きを感じます。
もはやこれらは言葉ではなく、アルファベットの行進です。

 この功罪は主として16世紀の宗教改革者のあのマルティン・ルター氏によっている。それまで聖書はラテン語で書かれていてドイツの一般庶民が読めるようなものではなかったのだけれど、ルターはそれをドイツ語に訳し、しかも民衆が使う平易な基本単語を組み合わせることによって新しい単語を作り上げた。それがドイツ語の造語能力を飛躍的に高めたのだと思う。

 ちなみに、ドイツ語圏の人ならだれでも知っている実在した一番長いドイツ語単語は79文字の下の単語らしい。
Donaudampfschiffahrtselektrizitätenhauptbetriebswerkbauunterbeamtengesellschaft(ドナウダンプフシッフファールツエレクトリジテーテンハウプトベトリーブスヴェルクバウウンターベアムテンゲゼルシャフト)
日本語:ドナウ汽船電気事業本社工場工事部門下級官吏組合

 余談だけれど、ぼくが好きなのはドイツ語の虫などの名前で、これも簡単な単語の組み合わせで出来ていることが多いのだが、想像していると楽しい。
例えば
 ・神に祈りを捧げる修道女→Gottesanbeterin (カマキリ)
 ・藁の中から飛び出てびっくりさせるヤツ→Heuschrecke (イナゴ)
 ・ツバメの尾っぽ→Schwalbenschwanz (アゲハチョウ)
 ・キャベツにたかる白いヤツ→Kohlweissling (モンシロチョウ)
   ・裸のカタツムリ→ Nacktschnecke (ナメクジ)

DSC05473.JPG

③外国語を取り込む逞しさ
 どこかの都知事さんではないけど日本ではやたらと英語由来のカタカナ単語が増えて、ファッション雑誌など見ると酷い時には助詞くらいしか日本語が見当たらない文章もあったりして。これは、一つには日本語の外国語を取り込む能力によるものかもしれない。具体的にはカタカナ表記と「~する」という動詞化をする便利な言葉の効果が大きい。例えば「エスケープ」と書けば外来語だと分かるし、「エスケープする」とすればそれだけで動詞になる。ひどい場合はマネジメントなんていう名詞が「マネジメントする」なんて具合に動詞化されたりもするが、それでもちゃんと意味は通じている。

 ドイツ語にも戦後多くの英語が流入している。もちろんドイツ語にはカタカナはないけど、日本語の「~する」と似たような動詞化するための便利な語尾「~ieren」というのがある。

例えば
 ・boykottieren(英語boycott)ボイコットする
 ・interessieren(フランス語intéresser)興味をもたせる
 ・spazieren(イタリア語spaziare)散歩する
 ・studieren(ラテン語studere)学問する
などがあるが、現在は英語からの流入がダントツに多いようだ。


④世界の主要言語の一つ
 ドイツ語は現在ドイツを始め、オーストリア、スイス、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン、ベルギーで公用語とされていて、世界中で約1億3千万人のドイツ語話者が存在するといわれ、そのうち約1億人がドイツ語を母国語としている。(英語を母国語とする人口は世界中で約4億人弱)

 また現在インターネットの使用人口の全体の約3パーセントがドイツ語であり、英語、中国語、スペイン語、日本語、ポルトガル語に次ぐ第6の言語である一方、ウェブページ数においては全サイトのうち約6パーセントがドイツ語のページであり、英語に次ぐ第2の言語であることは意外と知られていない。ドイツ語は難しいけど、面白い。むず面白いのだ。気長にまた勉強しようと思っている。


AG00333_.giflogoinky.gif

nice!(51)  コメント(6) 
共通テーマ:アート

nice! 51

コメント 6

ponko310

私がまだ恥じらいの乙女の高校生の頃、ドイツ語に興味が出て語学学校に通った事がありました。
die Bäckerei, die Wäscherei, die Büchereiなどの単語を習った時に、先生から「ではお肉を買う店は何でしょう」と聞かれた時にシラっと「die Schwenerei」と言って、大笑いされたことがありました。 ドイツ人の先生がハンサムだったので、それからほとぼりが冷めるまで1週間ほど授業を休みました。
by ponko310 (2021-06-13 03:16) 

Baldhead1010

学生の頃、ドイツ語があまりにも煩雑なので、単位を諦めて自然科学の4単位に振り替えました^^;
by Baldhead1010 (2021-06-13 14:15) 

Boss365

こんにちは。
ドイツ・バンベルグに住んでいたエンジニアの知人がいましたが、ドイツ語は英語に比べ細かく正確な表現が出来ると言っていました。
ドイツ語は全くわかりませんが、語学、セカンドライフ時に再度勉強したい分野です!?(=^・ェ・^=)

by Boss365 (2021-06-13 14:26) 

親知らず

大学1年と2年生の時にドイツ語が必修でした。
やはり名詞の性を覚えるのに大変でした。
性のせいで、冠詞から語尾まで違うし、そこに過去完了形とか来ると複雑怪奇。
ドイツ人は何も考えずに日常会話しているんですよね。
薬の名前で嘔吐抑制剤がナウゼリンとか、レストラン・ガストは意味が分かると面白いですね。
by 親知らず (2021-06-13 14:59) 

テリー

教養学部で、ドイツ語を第二外国語として、取りました。
他に、フランス語、ロシア語、スペイン語の選択肢がありましたが、英語に、一番近いかなと言うことでした。フランス語、ロシア語、スペイン語は、第三外国語で、少しだけ、勉強しました。旅行の時、結構、助かりました。
by テリー (2021-06-13 15:11) 

ニッキー

マーク・トゥエインの「アルファベットの行進」の言葉に
思わず笑っちゃいました^^
大学生の時にドイツ語を選択しましたが、ほとんど覚えてませんw
by ニッキー (2021-06-17 16:05) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント