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梅雨空逍遥 [gillman*s park]

梅雨空逍遥

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 ■ あの雲がおとした雨にぬれてゐる ( 種田山頭火「草木塔」)



 毎朝六時前に起きて散歩に出るのは最初は苦痛以外の何物でもなかった。ぼくの場合歳をとっても朝早く目が覚めてしまうということは全くなく、何もなければいつまででも寝ていたい質なのだ。ても散歩を再開してみるとあの朝の空気に触れる気持ちよさと言うものが戻ってきて、それが今励みにはなっている。

 と言っても、散歩を再開してから晴れた日と言うのはほんとに数えるくらいしかなくて、あとはどんよりとした今にも降ってきそうな、あるいはポツポツと降り出したような空模様の下の散歩ではあるのだけど…。折角小さいけれどもカメラを持って歩くようになったのに中々晴れてくれない。

 梅雨なのだからしようがないのだけれども、でもここ数年の梅雨は「梅雨(つゆ)」という日本の気候独特のしとしと雨と雨が織りなす情緒を携えた季節から、どこかしら東南アジア的な「雨期」と言う言葉がふさわしいような季節へと変貌を遂げているような気がする。

 特に近年は線状降水帯というようなやっかいな代物が出現して今週も九州の各地が未曽有の洪水に襲われたりしている。この未曽有のとか、五十年、百年に一度のと言う形容詞も毎年聞くようになって…、ということはこれが常態化しており稀有な事ではなくなってきていることを覚悟しなければいけない段階に来ているような気にもなった。


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 昨日も早朝家を出た時にはすでにポツッと来ていて、一応フード付きのウインドブレーカーは羽織ってきたのであまり降ってきたら引き返そうと思ってとりあえず公園に向かった。雲が低くたれこめ、風も出てきた。雲の動きも早い。

 公園散歩の途中でいつも一休みするところが何カ所かあるのだけれど、その一カ所であるベンチに腰掛けて空を見上げると太陽が雲のベールの向こう側に月みたいにどんよりと光っている。いつもはここでスマホを見て今日の予定なんかを考えたりするのだが、どことなく雨雲に急かされるようにまた歩き出した。

 散歩のときカメラを持って歩くと、そんなに何枚も撮るわけでは無いけど歩いている間に無意識に景色の中のマクロ的な視点ととミクロ的な光景を交互に切り替えて見比べながら歩いていることに気づく。例えシャッターを切らなくても通り過ぎてゆく光景が普段より頭の中に入ってきそうな気もするのだけど…。でも、シャッターが切れない。

 いつも必ず来る丘のところに差し掛かったころには風がかなり強くなっていた。やはり今は植物が成長する梅雨時なのだろう公園の繁みの草が大分背伸びをしてその上を強い風が通り抜けると、うねる海原のように波立つ。葉に当たった鈍い日の光が妖しく蠢いている。こういう光景がちゃんと撮れるようになりたいなぁとぼんやりと思った。

 そう思いながらも時間をかけてちゃんと向き合わないでチャッチャッと撮って逃げるようにして丘を下った。心の中では、何しろ散歩だからとか雨のせいにしている。池のところまでくるといつものアオサギが風を避けるように定位置から少し外れた石の上に留まっている。理由はよく分からないけど不思議にも今日も早朝散歩に出て良かったなぁと思いながら家に戻った。


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JUNKO

1枚目印象的です、山頭火も前には悩まされたことでしょう。
by JUNKO (2020-07-11 22:34) 

coco030705

お写真、4枚ともモノクロのよさが存分に出ているなと思いました。とてもいいお写真ですね。
by coco030705 (2020-07-11 23:01) 

ナツパパ

この時期特有の憂鬱さが見事に表された写真と拝見しました。
実際、この時期は湯鬱なのですあ、今年ななお一層なことで、
ガマンするのもたいへんです。
わたしは外出よりも室内で音楽に逃げております。
by ナツパパ (2020-07-12 10:31) 

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