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情報に身構える [新隠居主義]

情報に身構える


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 コロナ禍の中で世界中が騒然としてざわついている。感染予防に何が有効かとか、PCR検査をはじめとして各国の対応の仕方についても色々な情報が飛び交っている。中には意識的に流されるフェイクなどもあったり、一国の大統領までフェイクまがいの情報を出したり混とんとしてきた。そこへアメリカの人種差別や香港の騒動も加わってそれについても情報戦とも言えるような状況が展開されている。

 ひと昔前と違う今の難しさは、昔だったらテレビか新聞位しか一般の人にとってはニュースソースがなかったのに対して、今はSNSやネットニュースやネット動画を始めとして多様なニュースソースがあるという事だけど、逆に言えばそれがぼくらの頭の中の混乱の大きな原因にもなっている。

 そして、今までテレビや新聞は少なくとも中立や公平の外形を整えていたのだけれど、新たに勃興してきたメディアにはそう言った保証めいたものはない。まぁ、「私はネットなんて要らないし、テレビと新聞で十分」と言う人も多いと思うけど、それらの既存のメディアも先の原発事故や今回のコロナ禍でも見えてきたように必ずしもぼくらの知りたい真実を伝えている訳ではないという事にもぼくらは薄々感づいてきた。

 今回のコロナ禍では図らずもネット授業やリモートワーク、社会情報システムの脆弱性などいわば社会的なIT基盤の面において日本が世界から周回遅れに近い惨状だった事も浮き彫りになってしまった。これからはもっとネットなどを通してのコミュニケーションや情報把握する力が求められて来ると思う。(ただし、パソコン等に詳しい事と情報リテラシーは全く別のものと思う)

 もちろん、ネットとは全く無縁の生活を送るというのもそれも貴重な一つの選択肢であることには間違いがないけれど、ぼくのようなジイさまは別としても、若い人のようにこれからどんどん仕事をこなして行こうという人たちには情報の問題は無縁ではないと思う。

 今回のようなことがあると日常生活の中で身近な人からもLINEメールやFacebookのシェアやTwitterのツィートなどの形でいろいろな情報が送られてくることになる。そうした中でぼくが一番大事だなと思っているのは「全ての情報にはバイアス(偏り、偏向)が掛かっている」という事を念頭に置くという事だ。そのバイアスに気づくことがまず大事ではないかと思う。

 と言ってもそれは簡単なことではない。何故ならその情報を受ける自分の方にも間違いなくバイアスがあるからだ。そしてぼく自分も含めてそれに気づくのは極めで難しいことも確かだ。そのバイアスは育った環境や今までの自分の経験、受けた教育など様々な要素が心の奥深くで複合して醸成されていることが多いからだ。

 さらに厄介な事には、今のネット社会では自分のバイアスに叶った情報だけを集めようとすれば、世界の果てからでもそれらの情報は自分にすり寄ってくるのだ。つまりそうして日々自分のバイアスが補強され、しかも同じバイアスを持った集団を作り上げてゆくことまでできてしまう。

 これはもちろん悪い事ばかりではない。今アメリカで起こりつつあることもその一つとして見ることもできる。人権意識という一つの意識の高まりがネットを通して広がりつつある。実はバイアスの中身はマイナスの偏見〜アクティブな信条まで広範囲に及んでいる。つまり、SNSなどでのシェアやリツイート等はそのバイアスの中身によって「共感者」にも「共犯者」にもなりえる面を持っているという事だと思う。


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 ではぼく自身はというと、自分の持ってるバイアスもはっきり分からず、情報の専門家でもないので何とも心許ないのだけれど、情報を受け取るに際して普段からこれだけは気を付けようと思っていることがある。もちろん、それがぼくにちゃんと出来ているという事では全然ないのだけれど…。

 1.情報を受けるに当たって気をつけていること
①まず自分の今までの全経験を動員して自分の頭で考える→②違和感があれば→予断せずにまず頭の中で仮置きするという事を大事にしている。ぼくら日本人はこの「仮置き」するという事が苦手なのかもしれない。仮置きしておくとすぐ忘れてしまうという恐怖感があってか、直ぐ信じてしまうか言下に否定してしまうかのどちらかに傾くのかもしれない。西洋の凄いところはこの「仮置き」を忘れずに検証し続けることだと思う。→③最後まで残る自分の中の素朴な疑問の声を消さない。「ほんとかなぁ」と言う心の声を聴く。

 ぼくはその「情報の筋」というものも大事だと思っている。時間と手間を掛けてでも自分なりの「情報筋」を育ててゆく必要があると思う。今度のコロナ禍では筋の悪い情報が飛び交っているような気がする。至近距離にある情報ほど見えにくいことがある、ある程度時間をかけて良い「情報の筋」を見つけておく。今の時代、特に今のように混乱した時においては情報の「筋」を読む力が大事だと思う。それがないと、ネット等での安易なシェアやメールを通して自分自身が「筋」の悪い情報源そのものになってしまうような気がする。

 2.その情報の元を自分で可能な限り追い続けたり元を遡ってみる努力をする。
・反復して検証→時間をかけて検証するのも大事。すぐ忘れないで、フォローする癖をつける。
・複数の情報ルートにあたる。
・身近な人、その情報源もしくは取り扱われている関連の人に自分で確かめてみる。
・テレビなら情報を送り出す相手の表情をとことん読む。→ナンシー関方式

 3.偏り過ぎない、切り捨てない…
・自分のBookmarkや「お気に入り」の情報だけに囲まれて狭まる世界、自分と言うバイアスがかかりっぱなしの世界に正常な恐怖感を持つ。
・物事には必ず2つ以上の見方があると言うことを肝に銘じる。
・「無駄な情報」を排除する「検索」に用心する。一見無駄なものと見えても実は偶然性こそ人生を豊かにしてくれることを思い起こす。例えば新聞の片隅に小さく出ていた記事に偶然目が行き、そこから新たな視界が開けてくるような事を大事にする。すべてを検索に頼らない。

 4.極端に激しい言葉に過剰反応しない…断定、シンプルすぎる論理に気をつける。情報に使われている日本語の形容詞と語尾でその人の性格が想定できる。「空前絶後」「世界最大の」「かつてない」「過去最大の」「未曽有の」「断固として」など等大仰な形容詞の多発、断定形の連続などには反射的に身構える癖をつける。

 5.その情報から情動要素を抜いたら何が残っているかを考える
文学作品は別としても日本語は感情を乗せやすい言語であると言われることもある。文章から不安、憐憫、嫉妬、共感など情動に関わる語彙を除いてどういうロジカルな情報が残されているか考えてみる。


 考えただけで疲れてきそうだけれど、今はビッグデータの解析などから漠とした大衆ではなくバイアス別のクラスター毎に反応感度の高いキーワードを駆使するなど世論操作の技術というのも急速な進化を遂げているらしい。それはナチスが残した政治プロパガンダの手法を遥かに凌駕して新たな段階に入ったような気がする。

 最後に情報について考える時いつも頭に浮かんでくるのは、将棋棋士羽生善治さんのこの言葉だ。「何事であれ、最終的には自分で考える覚悟がないと、情報の山に埋もれるだけである」 恥ずかしながらぼくは今のところまったく自信がない。つくづく難しい時代になってきたものだ。


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ナツパパ

とても参考になるご意見と思います。
このコロナ騒ぎのみならず、暮らしていく上での大切なことですね。
わたしもニュースや情報に惑わされないよう気をつけなくちゃ。
いつも思うんですけれど、わたしたちはテレビ番組の中にいるわけではなく、
1時間や2時間で決着できる世界でも、すっきりスピーディーに解決が
約束された世界でもなく、スーパーマンや英雄はいないのだ、と。
これもバイアスがかかった考えかもしれませんが、そう思います。
by ナツパパ (2020-06-07 20:00) 

coco030705

こんばんは。
もはやTVのワイドショーも当てにならない時代になりましたね。
いろんなコメンテイターが様々なことを言っていて、いったいどれが本当なのか、よくわかりません。観ないほうがいいのかしらと思います。
そんな中、今日大阪で、アメリカの黒人問題のデモがありました。私はまさか、大阪でこのようなデモが行われるとは思いませんでした。自分の意識の低さを恥ずかしく思った次第です。
by coco030705 (2020-06-07 22:53) 

Boss365

こんにちは。
精度の高い記事を見つける事・判断するのも難しい社会。
自身のバイアスに気付くのも難しく・・・
起った事象を冷静に判断する能力が試されている感じです。
情報についての内容、大変参考になりました!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2020-06-08 12:35) 

めぎ

LINEもFacebookもTwitterもやっていないので、かなり幸せなことに膨大なSNSからは解放されていますが、それでもネットで日々ニュースを拾っていくと、「あなたに関心があるだろうニュース」みたいなのがスマホで常に提示され、それをちらりといるだけでその情報の曖昧さと扇動にうんざりします。
私自身も大いにバイアスのかかった人間と思いますが、なんとか事実を冷静に見続けたいと努力しつつ、その事実自体を知るのが大変、という感じです。
by めぎ (2020-06-11 17:21) 

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