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断捨離 家族の肖像 [下町の時間]

断捨離 家族の肖像


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 断捨離の中でも何とも難しいのがアルバムなど写真の扱いで、写真の中には自分で撮ったものだけではなくて、人の結婚式の写真や両親の時代の写真など量としても結構な量になる。

 

 生前、認知症になって記憶の薄れていったに見せてあげるために昔の写真を整理して主なものをスキャナーで取り込んでiPadに入れてそれを見せたりもしていたのだけれど、それでもまだ膨大な写真が残っている。

 

 ここのところ自分の断捨離も兼ねて母の遺品を整理していて今まで見た覚えがない写真が出てきた。撮られたのは昭和十年前後と思われるので、今から八十年位昔の写真だと思われる。写っているのは母の実家で撮られた家族の写真で、この写真はもしかしたらぼくも昔見たのかもしれないけれど記憶にはなかった。

 

 後ろに立っているのが母で、両端に座っているのが祖父と祖母だ。祖母は若い頃は評判の美人だったと母からよく聞かされていたが、そんな面影が残っている。ぼくが物心ついた時にはもうおばあさんという感じだったから、新鮮な感じがする。

 

 祖父もまだ壮年の容姿で、厳格な昔の日本の家長という感じだ。写真には女の子が三人、男の子が三人写っているが、この後さらに一番下の男の子が生まれているので一番上の長女とは20歳以上の開きがあることになる。

 

 この写真は千住のアサヒ写真館のK.Ishiiというシグネチャーの入った台紙に貼られているから写真屋を自宅に呼んで撮ってもらったものと思われる。よく見るといくつか面白いことに気がつく。子供達の真ん中に子犬が座卓に手をついているのが写っている。

 

 ぼくの家でもぼくが子供の頃から犬を飼っていたけれど、その頃は当然のように外で飼っており、ぼくの近所や友達の家でも座敷で犬を飼っている家はしらなかった。それを考えると八十年も前に座敷で犬を飼っていたのは当時としても珍しいのではないか。

 

 それともう一点は、いわばプロの写真屋が撮った写真なのだけれど真ん中に写っている男の子の顔が座卓の上に置かれた花で顔半分が隠れてしまって見えなくなっている。この男の子は長男で後年ばくもずいぶん可愛がってもらった叔父なのだけれど、その叔父の顔には隠したいものなどはなかったから、とても不可解だ。そう思うと、座卓の上の花瓶がなんとも不自然に思える。その時だけ叔父の顔に何かできものでもできていたのかもしれない。

 

 床の間に松らしきものが飾られていることをみると、正月に撮られたと思われるが、その時の幸せそうな家族の肖像と言えるかもしれない。映画の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ではないけれど、ぼくはその後ここに写っている人物がどんな道をたどったか概略を知ってしまっているので、この写真を見ると複雑な気持ちになる。

 

 母は98歳の天寿を全うしたけれど、この写真の中の二人は若くして夭折しているし、祖父母も後年一番下の男の子が生まれた後に離婚している。祖父が外に愛人を作りそちらにも子供ができたのが原因らしい。祖父母は昔としては珍しく恋愛結婚だったらしいが、最後まで添い遂げることは出来なかった。それらのことごとを思うとこの写真は幸福な形でのこの家族の最後の「家族の肖像」だったような気がする。

 

 

 

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*祖母の実家は昔はタバコ栽培を行っていた裕福な農家だったらしく、祖母の代には凋落しかけていたらしいのですが、祖父はそこに跡取り婿として婿入りしたらしいです。しかし、婿の立場が息苦しかったのか、続けて三人できた子供が皆女の子で跡取りが生まれないこともあってか、ある年祖父母は祖母の実家から籍を抜いて一家で東京に出てきたようです。

 その後、祖父は幸い東京都に職を得てその後男の子も生まれました。この写真は東京に来て関東大震災にあいながらも、東京で生活基盤を築いた時代に撮られたものでしょう。一方、祖母の実家の父、つまりぼくの曾祖父は東京に出て行った娘を気遣ってか、ある年の暮れ娘一家に正月に旨いものを食べさせてやろうと田舎でとれた農産物をリヤカーに積んで早朝まだ暗いうちに茨木の家をでたのですが、曾祖父が東京に着くことはありませんでした。

 東京へ向かう途中で心臓麻痺かなにかに襲われたのか竹藪の中で亡くなっているのが発見されたということでした。これも母から聞かされた話で、母の過去帳にはそういうことで曾祖父の命日は大晦日になっています。一枚の写真は色々なことを語ってくれます。

 


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コメント 5

(。・_・。)2k

リヤカーで茨木からですか、、、
切ないお話ですね

by (。・_・。)2k (2019-08-11 11:52) 

mimimomo

こんにちは^^
なんだか懐かしいようなお写真ですね。セピア色、我が家の昔の写真もこうでした。
そして皆それぞれの人生を生きて、もうバラバラになってしまった昔の家族。
これが人間なんでしょうね。
茨城からリアカーで・・・考えただけでも凄い距離、身体に無理をされたのでしょうかしらね。
by mimimomo (2019-08-11 14:12) 

coco030705

とてもいいご家族のお写真ですね。人間は運命に翻弄される生き物なのですね。興味深いおはなしでした。
by coco030705 (2019-08-11 15:51) 

JUNKO

家族写真は断捨離できないものの一つです。自分が生あるうちは大事にしたいとついつい思います。
by JUNKO (2019-08-11 21:57) 

song4u

ほんの数葉の写真。
だけど昔の写真は語りますよねえ。
写真の人々それぞれの物語が掘り起こされます。
我が家にも同年代の黒表紙の分厚い写真帳がありますが、
処分などとてもできそうにありません^^;
by song4u (2019-08-12 23:27) 

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