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断捨離Ⅱ [新隠居主義]

断捨離Ⅱ

ガラス乾板2018.jpg

 ここのところずっと、自分のリハビリ通院と母の処を行ったり来たりで、殆どその他の外出はできない状況なので、家の中の片づけや断捨離ばかりしている。昨日もリハビリの時にまだ痛みがでる程歩かないようにと言われた。そうなるとせいぜいが5000歩か6000歩位なので、美術館なんかもまだ無理かもしれない。

 というわけで、昨日も身の回りの整理をしていたのだけれども、その時小さなボール箱の中からガラスの乾板が出てきた。「乾板」と言っても若い人には分からないかもしれないけど、大昔はフィルムの(フィルム自体が今では分からないかもしれないけど)素材は以前の35ミリフィルムのように巻き取れる柔らかい素材ではなくてガラスなどでつくられていた。

 そのガラスの乾板をスキャナーでスキャンしてみたら小さな少女が二人写っていた。ガラスの乾板が入れてあった黄色く変色したパラフィン紙の袋にはもうパリパリになったセロテープで紙片が貼り付けられていた。そこには「みちい7歳、もとの11歳」と書かれていた。つまりそこに写っていた右側の少女がぼくの母でその隣が母の姉、つまりぼくの叔母だったのだ。場所は関東大震災後に母の一家は神田から千住に引っ越してきているので今の北千住の電機大のあるあたりだと思う。

 母は1920年(大正9年)生まれだから、この写真が撮られたのは1927年、昭和2年ということになる。今まではここに載せたように母の一番若い時の写真は12歳くらいの頃の写真だったのだけれど、これはさらに小さいころの写真だ。

 写真の歴史は絵画に比べればまだまだ若いけれど、それでも現実の時の流れをしっかりと見つめていたということかもしれない。この少女は今98歳になって夢うつつの世界を彷徨っている。複雑な気持ちだ。


みちい7歳1927年昭和2年smrs.jpg

 では、この写真が撮られた1927年とはどんな年だったのか…その年の出来事をざっとあげてみると。

 3月26日…台湾銀行が鈴木商店に新規貸出し停止命令
 4月2日…鈴木商店破産
 4月21日…全国で銀行取付け激化し十五銀行などが休業
 5月21日…チャールズ・リンドバーグが大西洋の単独無着陸飛行に成功
 7月24日…芥川龍之介が睡眠薬を多量に飲んで自殺
 9月1日…宝塚少女歌劇レビュー初演(『モン・パリ』)
 11月5日…来日中の蒋介石が田中首相と会談(国民政府による中国統一に協力要請)
 11月12日…ソビエト共産党がトロツキーらを除名
 12月30日…上野・浅草間に日本最初の地下鉄が開通
  (Wikipediaより)

 鈴木商店は現在の神戸製鋼をはじめ帝人やIHIなど現在に繋がるそうそうたる企業群を傘下に抱える大企業だったが、非上場で経営を全て借入れによっていたため台湾銀行の融資が止まると立ちいかなくなってしまった。その発端は当時の大蔵大臣の不用意な発言によって、各地で銀行の取り付け騒ぎがおき台湾銀行の融資停止もそのあおりをくらったと言われている。

 そしてその二年後の1929年にはアメリカで経済恐慌が発生しそれはあっという間に日本に到達し昭和大恐慌がおき暗い時代に突き落とされる。それはやがて日本における軍部の台頭をも招きさらに暗い時代へと続いていく。母の生きた時代がくすんだようなガラス看板の向こうに潜んでいる。


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親知らず

私も先月、母の若い時の写真を見ました。
母がずっと大切に持っていた写真で、私は初めて見た写真でした。
皆赤ちゃんで生まれて来て、可愛らしい時があったのですよね。
by 親知らず (2018-09-01 22:47) 

TaekoLovesParis

お揃いのお着物と袴で、きちんとした雰囲気ですね。写真がまだ珍しく、撮る方も撮られるほうも緊張していた時代かしら。
ちょっとしたきっかけで、恐慌になり戦争へとつながっていく、今の時代にもありうることですね。
by TaekoLovesParis (2018-09-01 22:57) 

katakiyo

素晴らしい発見ですね、平和がつずきますように。
by katakiyo (2018-09-02 08:31) 

ZZA700

歴史的価値のある貴重な資料ですね。
当時の暮らしが垣間見られるのはもちろんのこと、
乳剤の塗りムラらしき痕跡が見られて大変興味深く拝見しました。
by ZZA700 (2018-09-02 16:10) 

テリー

乾板の写真、色々、考えさせられます。
by テリー (2018-09-02 16:10) 

女王猫


ホッとしました~更新がないので心配してしもてた(勝手に)
うちの母の5歳頃の写真は写真館で、余所行きの洋服をきている、わざわざ撮った様なものでしたよ
こちらは写真屋さんが来てくれたのか?おじい様かご家族がカメラを所持してられたのかしらと富裕層を感じるお写真ですね
母方は代々続く反物屋で、戦中も食べるものに困らない程度に裕福だったと聞いていますが、カメラまではなかったと思うな~すいごいな~
by 女王猫 (2018-09-03 00:12) 

女王猫

そして、お母さま、かなりの美人!
by 女王猫 (2018-09-03 00:14) 

としぽ

ガラス乾板で残っているのは凄いですね。


by としぽ (2018-09-04 23:23) 

JUNKO

甲板の写真は貴重です。断捨離するわけにはいきません。
by JUNKO (2018-09-16 16:07) 

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