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荒川土手 [下町の時間]

荒川土手


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 以前撮った写真を見ていたら、そう言えばここのところ昔住んでいた千住あたりに暫く行ってないなと思った。この写真は数年前の夏の終わり、まだ母が定期的にリハビリ病院に長期入院していた頃撮ったものだ。その日もいつものように病院に行ったのだけれど、母のリハビリが始まったばかりでまだ時間がかかるということだったので病院の近くの荒川土手まで行って時間をつぶすことにした。

 土手の上は晩夏とはいえ日差しの力はまだ十分夏の厳しさを残している光にあふれていた。河原のグラウンドでは少年サッカークラブの練習だろうか、少年たちの甲高い声が土手の上まで響いてくる。少年たちの父兄と思われるギャラリーが数名。むせ返るような草いきれとじりじりと照りつける太陽。こんな感覚を子供の頃、何度も何度もこの土手で味わったことを想い出した。




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 母の入院していた病院のある柳原から近い土手のこの辺りは、小津安二郎の「東京物語」や青春ドラマの「金八先生」にも登場するのだけども、ぼくが子供の頃遊んでいたのはここからもう少し上流に行った新橋と西新井橋の間あたりだったのだが、友達と自転車で家から荒川土手まで競争して最後に土手をこぎあがり、自転車を草むらの上に倒しまま大の字になると眩しい太陽が気持ちよかった。

 暫くして起き上がるとすぐ目の前にはお化け煙突があった。土手の上から見下ろす千住の町並みはゴチャゴチャとして埃っぽく、でもそこから聞こえてくる街の喧騒はまるでエネルギーの塊のようだった。不思議なことにこの頃の記憶はなぜかモノクロの感じがする。この日の空のように抜けるような青い空の記憶ではない。おそらくその頃の空はそんなに青くなかったのかもしれない。お化け煙突からも毎日黒い煙が出ていたし。

 一瞬、小津安二郎が「東京物語」をカラーで撮っていたらどうなっていたのかなと考えた。小津監督のことだから画面のどこかに赤い色を潜ませたとは思うのだけど、それを引き立てるようには当時の空は青くは無かったのだろうな。この日の青空なら小津監督の好きなAgfaの色味が活かせたかもしれない。荒川土手はぼくのふるさと東京の原点みたいなものだ。今度はゆっくりと向き合いに行きたい。



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JUNKO

ソフトな仕上がとても素敵です、縦構図の2枚が特に気に入りました。シンプルがベストですね。
by JUNKO (2017-06-10 21:26) 

ZZA700

夏らしい風景が良いですね。
クロード・モネの日傘をさす女を思い出しました。
by ZZA700 (2017-06-18 16:17) 

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